<フィギュアスケート:GPシリーズ第1戦・スケートアメリカ>◇2日目◇25日(日本時間26日)◇米ワシントン州エバレット、コムキャストアリーナ

 男子フリーで小塚崇彦(19=トヨタ自動車)がSP3位からの逆転でGP初優勝を果たした。フリーでトップの146・08点をマーク。合計点を226・18点まで伸ばした。SP、フリー、合計ともに自己ベストを記録。グルノーブル五輪代表の小塚嗣彦さん(61)を父に持つサラブレッドが、ウェア、ライサチェクら米国の強豪を抑え、10年バンクーバー五輪へ向けて大きな1歩を踏み出した。

 ざわつく場内、最終演技者の全米王者ライサチェクも見つめる電光掲示板のトップに「KOZUKA」の名が浮かび上がった瞬間、小塚ははにかんだような笑みを浮かべた。「何が何だか分からなくて、体から魂がふわーっと抜けた感じ」。逆転での自身初、日本人男子4人目のGP制覇を果たした余韻に浸った。

 切れない心でつかんだ初優勝だった。「いつでも跳べるようにしたい」という今季の目標の4回転トーループを冒頭に失敗。転倒して尻もちをついたが、ミスを引きずらなかった。「最後まであきらめなかったのが良かった」。次の2連続3回転ジャンプを成功させ、3個のスピンのうち2個で最高のレベル4をマーク。のびのびと滑り切った。

 初出場して8位に入った3月の世界選手権の経験が生きた。それまでは光る才能を持ちながら、精神的な揺らぎが演技に響き、1度のミスから崩れることが多かった。だが、シニアの世界の舞台を踏み「技術より気持ちの面で進歩した」。佐藤信夫コーチも「4回転の失敗後、持ちこたえたことに価値がある」と、この日の滑りを称賛した。

 父嗣彦さんはグルノーブル五輪代表、母幸子さんも全日本選手権アイスダンス2位の実績を持つサラブレッド。普段は淡々としているが「父も出た五輪に出たいと思う」と話す時は眼光の鋭さが増す。現在は世界一のエース高橋(関大大学院)、不祥事から復帰した織田(関大)に続く日本男子3番手の立場だが、まだ19歳。バンクーバー五輪までの伸びしろはある。

 芸術要素点は実績などで積み上げた印象が大きく左右するだけに「今季は小塚崇彦という名前を審判の方々に覚えてもらいたい」と話していた。事実、今大会も2位ウェアに芸術要素点で劣っていたが、この日の滑りが今後に向けた最高のアピールになったはずだ。

 GPファイナル出場の可能性も高くなり、日本連盟の伊東秀仁フィギュア委員長は「小塚は伸びしろがある。世界選手権を経て自信もつき、今後もっと点が出ると思う」と期待を表した。「うれしさと驚きの両方。昨季まで足りなかった気持ちが(今は)ある。これからも練習をしていきたい」と話した小塚がバンクーバーに向けて、さらなる成長を続ける。