<フィギュアスケート・GPシリーズ第6戦:NHK杯>◇2日目◇29日◇東京・国立代々木第1体育館

 「ジャンプの真央」が完全復活した。ショートプログラム(SP)首位の浅田真央(18=中京大中京高)が、2度のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)に挑み、今季初優勝を飾った。2度目がわずかに回転不足と判定されたが、金妍児(韓国)に次ぐ今季2番目の高得点となる総合191・13点でGP通算6勝目を挙げた。GPファイナル(12月11日開幕、韓国・高陽)で、3連覇を狙うライバル金に挑む。3位の中野友加里、すでにGPシリーズ2大会に出場した安藤美姫もGPファイナル進出を決めた。

 誰も予想できなかった。冒頭で完ぺきな3回転半を決めた直後だった。本来は再び単発の3回転半の予定だったが、浅田が跳んだのは、さらに難易度の高い3回転半-2回転トーループの連続ジャンプだった。冒頭で完ぺきに決めたことで、安全策の2回転半を選択しても、優勝はほぼ確実だった。それでも浅田は攻めた。2回目は着氷を決めたが、わずかに回転不足と判定された。国際大会では史上初となる、2度の3回転半成功とはならなかったが「トリプルアクセルを2回跳べて良かった」と、満足そうに笑顔で振り返った。

 実は冒頭の2つのジャンプは順番が逆だった。最初の3回転半がきれいに回りすぎた分「ちょっと危ないと思って」と、本来予定していた2回転連続ジャンプを単発に切り替えた。通常、その後は当初のプログラムをこなすが、浅田は「コンビネーションジャンプを跳ばないと意味がない」と、あえて難易度を高めた。3回転半-2回転が成功していれば最低でも4・7点加わり、フリーでも総合でも今季の金を上回っていた。

 3回転半は現在、女子では世界で浅田と中野しか、大会で跳ぶことができないほど難易度が高い。92年アルベールビル五輪で銀メダルの伊藤みどりさんが、フリーで2度3回転半を跳んだが、序盤の3回転半で転倒し、急きょ終盤のジャンプを3回転半に変えて成功したもの。浅田は最初から2度の3回転半成功を狙った構成だった。

 演技点のスケート技術の項目では驚異的な8点をマークした。最後の決めポーズをつくろうとした際に、バランスを崩すアクシデントがあったがご愛嬌(あいきょう)。頭をたたくようなしぐさを見せ、珍しくガッツポーズ。28日は70点だった自己採点を「90点」と、笑顔で言い切った。

 ライバル金とGPファイナルでの今季初対決が決まった。シニア転向後の直接対決は2勝2敗。最後に直接対決した今年3月の世界選手権では浅田が優勝、金は3位。だが当時の金は腰痛を抱えていた。ともに万全で迎えるGPファイナルは、10年バンクーバー五輪を見据えた前哨戦第1弾。金と同じ総合190点台を出し「対戦するのが楽しみ」。回転不足にも「残念だけど、それは次への課題」と前向き。「ジャンプの申し子」が、自信と大きな武器を手に宿敵に挑む。【高田文太】