<福岡国際マラソン>◇7日◇福岡・平和台陸上競技場発着点(42・195キロ)

 日本男子マラソン界が、またも世界との差を痛感させられた。入船敏(32=カネボウ)が2時間9分23秒で日本人トップの2位に入り、09年世界選手権(ベルリン)の代表に内定。しかし、30キロすぎに北京五輪銅メダルのツェガエ・ケベデ(21=エチオピア)にスパートされると、日本勢は誰もついていけず、最後は3分以上の差をつけられた。日本陸連首脳も完敗を認め、惨敗に終わった北京五輪からの流れは変えられなかった。

 レースは、30キロすぎに動いた。その瞬間、世界と日本が真っ二つに分かれた。ケベデがスパートすると、先頭集団を形成していた入船、松宮、佐藤は反応できない。ケベデは35キロまでの5キロを、14分17秒で駆け抜けた。ゲブレシラシエ(エチオピア)が世界記録達成時にもマークしていない驚速ラップに、誰もついていけなかった。

 日本勢は終盤、世界選手権の内定条件となる日本人トップ争いに切り替えた。35・4キロ付近から抜け出した入船が、粘りきってゴール。だが、最後の約10キロで、ケベデと3分以上も差がついた。「力の差を感じましたし(2時間)6分10秒でいっているとは思わなかった。そんなにあけられているとは」と振り返った。

 入船は32歳ながら、今年2度のマラソンで、いずれも自己ベストを更新した。本人の努力のたまものだが、記録は日本歴代41位。北京五輪後、強化委員会から独立で発足した長距離・ロード特別対策委員会の沢木啓祐委員長は「(終盤に追い上げた)藤原以外の3人は、弱いところがもろに出た。30キロ以降のスタミナが弱点。同じような調整をして、同じような失敗をしている。金太郎あめでは駄目だ」と指摘した。

 同委員長は跳躍の踏み切りや、短距離の走法などを導入する余地まで言及したが、特効薬は見当たらない。同委員会の河野匡氏は「差を認めた中で、あきらめたら終わり。可能性を見いだしていきたい。負けても負けてもぶつかっていくしかない」と話した。【佐々木一郎】