<フィギュアスケート:全日本選手権>◇26日◇長野・ビッグハット

 真央に穴!

 女子SPで世界女王の浅田真央(18=中京大中京高)が、まさかの2位発進となった。冒頭に予定していた3回転フリップ-3回転ループの、後半ジャンプが1回転となる失敗が響き、首位の中野友加里(23=プリンスホテル)と1・96点差の65・30点にとどまった。3位の安藤美姫ともわずか0・28点差。27日のフリーは大混戦になった。

 「ジャンプの浅田」を期待していた満員の観衆を、いきなり凍り付かせた。冒頭の2連続3回転。浅田は3回転フリップを決めたが、続く3回転ループが、跳びきれずに1回転になった。一瞬、間を空けてもう1度跳び上がった。当初の予定にはなかったとっさの動きが、焦る心情を物語っていた。「コンビネーションジャンプは思い切って跳ぼうと思っていたので、それができずに残念。失敗した理由は分かりません」と、笑顔はなかった。

 この日失敗した連続ジャンプは、成功すれば基礎点だけで10・50点が入る。SP最大の得点源だったが、わずか3点しか稼ぐことができなかった。シニア転向初年度の05年以来(3位)、3年ぶりにSPで首位発進できなかった。大会前は断トツの優勝候補だったが、首位中野、3位安藤との大混戦になっていた。

 3年ぶりのGPファイナル制覇などの好成績を挙げてきたが、実は2連続3回転ジャンプの成功は1度もなかった。後半ジャンプが回転不足になったり、転倒したり、危険を回避するためとっさに単発ジャンプに切り替えたり。今季3大会のSPとフリー、それにこの日を加えて7度挑戦を試み、すべて失敗。練習では、簡単に跳んでいるだけに本人も「うーん。分かりません」と理由は思い当たらなかった。

 国際大会よりも直前の演技者の得点が出るタイミングが早く、気持ちを落ち着かせる前に名前がコールされた。「(名前を)呼ばれてから1分以内に演技を始めないといけないので、少し焦っていた」と動揺もあったという。だが今後も得点源の2連続3回転で取りこぼすようなら、金妍児(韓国)ら強力なライバルたちがひしめく世界選手権では致命傷になりかねない。

 GPファイナルでは女子の国際大会では史上初めて成功した、2度の3回転半という強力な武器を、生かし切れなくなる危険性もある。「もう終わったことなので、フリーに向けて切り替えたい」。終始険しい表情で話した浅田が、事態の深刻さを誰よりも理解していた。【高田文太】