<レスリング:全日本選抜選手権>◇20日◇代々木第2体育館

 男子グレコローマン84キロ級の斎川哲克(23=両毛ヤクルト販売)が初優勝で世界選手権(9月、デンマーク)の出場を勝ち取った。急死したプロレスラーの三沢光晴さんと同じ、栃木レスリング界の出身。試合後には尊敬する大先輩の早すぎる死に号泣する一幕もあった。

 初の世界選手権出場が決まった歓喜の涙ではなかった。栃木の足利工出身の斎川は、足利工大付出身の三沢さんの死について聞かれると言葉に詰まり、そして突然、号泣した。「すごくショックでした…。高校は自転車で15分ぐらいの距離。お会いしたことはないが、同じ栃木ですごくあこがれていたし、悲しい」。

 接点はないが、栃木県がはぐくんだ世界的レスラーのことを尊敬していた。「三沢さんは逃げない。そして技も全部受けるところがすごかった」。ノアの試合会場にも足を運び、その勇姿を目に焼き付けていた。だからこそ、今大会の1週間前の13日夜、悲報に衝撃を受けた。「(三沢さんを指導した足利工大付の)大島監督のことも心配です」と声も沈んだ。

 練習拠点は日体大だが、地元LOVEを貫く。大会が終われば地元の所属先に結果を報告しに行く。「栃木をアピールしたいんです」。中学まで棒高跳び選手。躍動感に加え、84キロ級で185センチの長身は世界に通じる。日本代表、そして三沢さんを輩出した栃木レスリング界を代表して、世界に挑むつもりだ。【広重竜太郎】