<全国高校総体>◇1日◇ボクシング◇奈良・平群町総合スポーツセンター体育館

 ボクシングライト級準々決勝で、初出場の田中一(恵庭南3年)が3回1分35秒RSCで勝利を収め、4強に進出した。今春の全国選抜は1回戦敗退も、得意のインファイトに磨きをかけ急成長。今大会3試合中2試合RSC勝ちという猛打でメダルを確定させた。

 田中は下がらなかった。開始のゴングと同時に接近して連打、連打。2回と3回に連続してダウンを奪い、勝負を決めた。「まだ完全じゃない。目標はチャンピオンですから」。30日の2回戦で全国1勝を挙げたばかりのダークホースが堂々と優勝を宣言した。

 視力は0・3と近視のため試合後は眼鏡をかける。指導する中村隆之監督(43)は「コーナーで待つ相手の表情は見えないが、あの距離ならパンチは見えている」と言う。徹底した接近戦は、視力のハンディをカバーするために田中自身が編み出した戦法だった。

 大工の父淳さん(45)の「何でも良いから1番になれ」という思いで「一(かず)」と名付けられたが、中学時代までは無気力で遅刻続き。所属していた野球部にもろくに足を運ばなかった。だが、中3の12月にテレビ観戦した現WBAスーパーフライ級王者・名城信男の初防衛戦に感動して、心を入れ替えるため高校入学と同時にボクシングを始めた。

 5月の帝拳ジム合宿では13年前に高校3冠を果たした偉大な先輩、松橋拓二とも対面した。「オーラを感じた。自分もそんな男になりたい」。強烈なマシンガンフックで伝説の先輩に並ぶ覚悟だ。【永野高輔】