2016年東京五輪招致に「辛口」評価が下された。国際オリンピック委員会(IOC)は2日、IOC評価委員会が16年夏季五輪招致を目指す東京、シカゴ、マドリード、リオデジャネイロの4都市を現地調査して作成した評価報告書を公表。過去に唯一五輪を開催している東京は、懸念材料だった市民支持率が55・5%と最低だったほか、自信のハード面でも、既存施設の古さや選手村の面積など4項目で厳しい指摘を受けた。この報告書は開催都市が決定する10月2日のコペンハーゲンでの総会で、投票権を持つIOC委員の参考資料になる。

 東京の自信が揺らいだ。「なぜ東京開催か」という理念の弱さに指摘はなく、懸念材料だった支持率の低さに加え、自信を持っていたハード面にも厳しい評価が待っていた。JOCの市原則之専務理事は「東京が自信を持っていたハード面で指摘されたのは予想外。最後のプレゼンで勝負するしかない」と話した。

 97%の会場が、半径8キロ圏内に収まる五輪史上最もコンパクトな大会や財政基盤の強さなどは高い評価を得た。しかし、最初に指摘されたのは、やはり低い都民の支持率。昨年6月にIOCが公表した東京開催の支持率は59%で4都市内で最低。今回の調査ではさらに3・5%も下回る55・5%で再び最低だった。前回の反省から招致委員会が多くのイベントを仕掛けたが、その効果はなかった。

 自信を持っていたハード面にもほころびが出た。新設の施設を少なくし、64年東京五輪の施設を再利用する「遺産(レガシー)」を売り物にしたが、評価委員会はいくつかが改修か建て直しの必要があると指摘した。そうなると予算の点にも響いてくる。

 選手村に関しても建設用地の面積31ヘクタールが疑問視された。リオの75ヘクタール、シカゴの52ヘクタールに比べ手狭で、必要な機能を提供できるかどうかが危ぶまれるとしている。五輪スタジアムと選手村周辺の交通渋滞も懸念されている。

 宿泊に関しては期間が問題となった。確保されているホテルは開会式から閉会式まで。観客、関係者、役員らの多くは、開会式前から、その都市に入るため、期間の延長を要求している。さらに宿泊料金の高さも問題となった。

 ただほかの3都市も東京と同じように各項目で懸念事項を指摘されている。JOCの福田富昭副会長も「最近の評価報告書は参考書にすぎない。大事なのはIOC委員とのつながり」と強調。後れを取っていたリオデジャネイロが好評価を得たことで、混戦模様の五輪招致レースは、残り1カ月も続く。【吉松忠弘】