体操男子で2004年アテネ五輪団体総合金メダルの塚原直也(34=朝日生命)が、オーストラリア国籍(市民権)取得を前提に、来年のロンドン五輪への出場を目指していることが19日、分かった。塚原は「日豪両国の懸け橋になりたい」と話している。

 もし市民権を取得し、ロンドン五輪代表となれば、日本の五輪金メダリストが、今度は異なった国から五輪に出場することになる。体操関係者によると「日本では聞いたことがない」と、異例の出来事となりそうだ。

 塚原は、09年に「指導者としても国際経験を積みたい」と、オーストラリアに体操留学した。昨年夏に永住権は取得しており、市民権申請への準備段階だという。しかし、永住権取得後、4年を経過しないと市民権の申請は認められないため、特例を求める形となる。市民権を得た場合、日本国籍は放棄しなくてはならない。

 国際オリンピック委員会(IOC)憲章では、違った国から代表で出場する場合、新たに国籍を取得した後、3年は新しい国の代表になれないとある。しかし、例外として2カ国の国内オリンピック委員会および、その競技の国際連盟が認めれば、その期間を短縮できる。すでに、塚原の場合、日本とオーストラリアの協会では合意しているという。

 ◆塚原直也(つかはら・なおや)1977年(昭52)6月25日、東京都生まれ。五輪金メダリストの父光男氏とメキシコ五輪代表の母千恵子さんの影響で、11歳で体操を始める。明大-朝日生命。96年から全日本選手権で5連覇、99年からNHK杯3連覇。96年アトランタ五輪個人総合12位、99年世界選手権同銀メダル、00年シドニー五輪同18位、04年アテネ五輪は団体総合金メダルのメンバー。166センチ、64キロ。

 ◆日本から国籍を変えて五輪に出場した主な選手

 フィギュアスケートの井上怜奈は日本代表として92年アルベールビル五輪にペアで、94年リレハンメル五輪にシングルで出場。05年に米国籍を取得し、06年トリノ五輪は米国代表ペアとして出場した。同じくフィギュアの川口悠子はロシア国籍を取得し、10年バンクーバー五輪はロシア代表ペアで出場。一方、卓球の偉関晴光は中国代表で88年ソウル五輪複で金メダルを獲得し、00年シドニー五輪は日本代表で出場した。また、芸人の猫ひろしが陸上マラソンでのロンドン五輪出場を目指し、カンボジア国籍の取得を申請している。