<柔道:全日本実業個人選手権>◇27日◇初日◇兵庫・ベイコム総合体育館

 男子60キロ級で五輪3連覇の実績を持つ野村忠宏(36=ミキハウス)が同級の優勝を逃し、来年のロンドン五輪出場は絶望となった。準々決勝で小川武志(32=了徳寺学園職)に優勢負け。優勝すれば得られる11月の講道館杯(千葉)の出場権獲得はならず、ロンドンに向けた強化指定選手に復帰する可能性が消えた。

 野村

 寂しいし、悔しいけど、これが勝負の世界。これが今の実力です。

 現在は強化指定を外れているため、今大会で優勝して講道館杯の出場権を獲得し、さらにそこで好成績を残す必要があった。「まともに練習を始めて1カ月半。思い描く柔道はできなかった。もう少し、時間がほしかった」。注目の進退については「う~ん、どうしよう…」とつぶやき、しばし沈黙。「自分の経験や技術を若い世代に伝えていくのも使命」と言えば、一方で「ロンドンの次の年の世界選手権をバカみたいに狙ってもいい」とも話した。

 「柔道は続けたい。ただ今後どういうふうに向き合っていくのか、ゆっくり考えます」。生涯柔道家は宣言したが、競技者として続けるかは微妙。勇気ある決断には、もう少し時間がかかりそうだ。【大池和幸】