<フィギュアスケート:全日本選手権>◇24日◇大阪なみはやドーム◇男子フリー

 2010年世界選手権優勝の高橋大輔(25=関大大学院)が2年ぶり5度目の全日本王者に輝いた。ジャンプで3度転倒するなどフリーは3位ながら、合計254・60点。前日首位だったショートプログラム(SP)の貯金を生かして逃げ切り、2位の小塚崇彦(22=トヨタ自動車)、3位の羽生結弦(ゆづる、17=東北高)とともに来年3月の世界選手権(フランス・ニース)代表の座を確実にした。

 演技を終えた高橋は思わず天を仰ぎ、手で悔しそうに顔を覆った。「よくないですね。優勝した感じがしない。こんな演技をしてたら勝ってはいけない」。最初の4回転トーループは軸がぶれて尻もちをついた。その後もジャンプで2度転倒した。ただ表現力を示す5項目ではすべて8点台と高得点。ジャンプのミスに引きずられず、定評ある表現力を生かして何とか逃げ切った。

 3年後のソチ五輪を見据え、今季はステップアップの1年とし、さまざまなことに挑戦中。バレエのほか、ストレッチにも積極的に取り組んだ。「痛いし、しんどい。今までは(体が)硬いのがコンプレックスだった。気付いてはいたけど、見ないふりをしてストレッチしなかった」。試合も練習の1つと位置づける。そんな手探りの中での頂点だけに「まさか優勝できるとは」と本音も漏らした。

 「この経験は自分のためになるし、次につながる。ソチで勝つには、今のままじゃ不十分。まだまだ頑張ります」。10年バンクーバー五輪の銅メダルは「過去のこと。時代は流れている」と言い切る。元世界王者のプライドを心の隅に追いやり、自らを見つめ直す。2年ぶりの全日本タイトル奪回も通過点にすぎない。【大池和幸】