41歳が五輪出場の要になる。昨年12月にホッケー女子代表に復帰したDF加藤明美(41=HFC-HANNO)が、今月上旬まで行われたチャンピオンズ・トロフィー(アルゼンチン)で全6試合に出場、豊富な経験で守備陣をまとめた。五輪初出場の04年アテネ大会から「最年長」としてチームを引っ張り、08年北京大会では主将で活躍した無職、独身の大ベテランが、ロンドン五輪世界最終予選(4月25日開幕、岐阜グリーンスタジアム)へ完全復活した。

 「日本の顔」は真っ黒に日焼けしていた。さくらジャパンのとりでは、日本歴代首位375キャップの加藤だ。昨年末の合宿で1年ぶりに代表復帰すると、チャンピオンズ・トロフィーでは真夏のアルゼンチンで全6試合に出た。3大会連続の五輪を狙う41歳が目をキラキラと輝かせる。

 加藤

 気がついたら40歳を超えてました。最年長って、33歳のアテネからずっとですから。疲れが抜けにくくなってますが、クルム伊達さんは同い年ですし、アニキ(43歳の阪神金本)にも負けられませんね。

 昨年12月、代表復帰の要請があった。10年秋の選考会で「落選」したショックもあり「戻るべきか3日間迷った」。背中を押したのは、いつも「早く嫁に行って」と言う母悦子さんだった。「ここまでやったらやり切らなきゃ」。親交のある歌手大黒摩季も「加藤さんのいない代表は考えられないよ」と応援した。

 初めて日の丸を背負ったのは90年、19歳だった。「AKB48より、おニャン子クラブ」がアイドルだった加藤は今、「AKB世代」の19歳MF田中(山梨学院大)と一緒にプレーする。「今の若い子は語尾にこうつける、とか教えられました。さっぱり分からないけど」と22歳差も楽しむ。

 安田善治郎監督(65)は「姿勢を含めて日本の財産」と感心する。「代表は長期離脱が多くて迷惑がかかる」とバイトもせずに独身。故郷埼玉で親の援助を受けながら節約して、体のケアに奈良県内の治療院へ通う。アテネ五輪のソフトボールで宇津木麗華が41歳で出場したが、球技では珍しい40代の五輪戦士へ。加藤は「気持ちが切れたら終わり」と満開の桜を咲かせるために戦っている。【近間康隆】

 ◆加藤明美(かとう・あけみ)1970年(昭45)12月13日、埼玉・秩父市(旧荒川村)生まれ。中学はソフトボール部。秩父東高で「ボールがゴールに当たる音にあこがれて」ホッケーを始める。天理大2年で代表初選出。26歳から埼玉・飯能のクラブチーム「HFC-HANNO」でプレー。04年アテネ五輪と08年北京五輪に出場。高校はMFで大学途中にFW、アテネ五輪前からDF。家族は両親と兄、妹。血液型A。

 ◆女子ホッケーのロンドン五輪への道

 五輪は12カ国で実施。中国や韓国、オランダなど9カ国が出場を決めており、日本は4月25日から岐阜グリーンスタジアム(岐阜・各務原)で開催される五輪最終予選日本ラウンドで優勝するしかない。最終予選は6カ国総当たりで1次リーグを行い、上位2カ国が決勝で対戦。日本は世界ランク最上位だが、韓国出身選手が多いアゼルバイジャンなど気の抜けない相手ばかりだ。