<卓球:世界選手権団体戦>◇4日目◇28日◇1次リーグD組◇ドイツ・ドルトムント

 17歳の丹羽孝希(青森山田高)が、日本男子を決勝トーナメント進出に導いた。第2試合でロシアのエース、スミルノフに大逆転勝ち。3-0のストレート勝ちに貢献した。通算3勝1敗で、この時点で最終スロバキア戦で棄権でもしない限り、3位以内が確定。ロンドン五輪で団体戦メンバー要員の“第3の男”が、日本男子を上昇気流に乗せた。

 絶体絶命だった。誰もが丹羽の負けを覚悟していた。2-2で迎えた最終ゲーム。1-8と追い込まれた。負ければ4番手の水谷に再び試合が回り、次の松平にもプレッシャーがかかる。だが、17歳はそんな重圧などみじんも感じていなかった。「1点で負けたら、チームの勢いを下げてしまう。負けるにしても、食らいつこうと開き直った」。

 サーブの回転を変えた。仲間からのアドバイスを受けて、上回転から下回転に変更。これが効果てきめんだった。世界最高11位で、年齢が倍の34歳スミルノフの頭を混乱させた。5点連取で追い上げ開始。マッチポイントは3回許した。だが「僕は追い上げた立場。相手の方が緊張してた」。最後に相手のフォアが外れた瞬間、場内割れんばかりの拍手が起こった。

 水谷は「あそこで負けたら、賢二も負けていたかもしれない」と後輩の健闘をたたえ、宮崎監督は「丹羽は、それまで50%の力しか出していなかったんじゃないか。精神的な強さをあらためて感じた」と舌を巻いた。さらにこの大逆転劇が会場の空気をも変えた。続く一戦では、ドイツの子どもたちがスティックバルーンをたたいて「ヤーパン」(ドイツ語で日本)の大合唱。「やってて楽しかった」と、フルゲームを競り勝った松平の背中を押した。

 ひとまず、日本男子の事実上の1次リーグ突破も決めた。ポーランド戦のまさかの敗戦から立ち直った日本。その功績は間違いなく、五輪団体戦でも切り札になる“第3の男”がつくった。【今村健人】