「第88回日本選手権水泳競技シンクロナイズドスイミング競技兼ジャパンオープン2012」は5月2日(水)に開幕、東京辰巳国際水泳場で4日間にわたる熱い戦いが繰り広げられる。今年7月27日に開幕するロンドン五輪を間近に控え、昨年の世界水泳デュエット銅メダルのスペインなど海外から強豪国も参戦する。激戦を勝ち抜き、ロンドン切符をつかんだ「マーメイドジャパン(日本代表)」の華麗なるパフォーマンスに注目が集まる。

 今夏のロンドンで表彰台を目指すマーメイドジャパン(日本代表)にとって、今大会は日本のファンに向けた「壮行試合」となる。4月の世界最終予選(英ロンドン)で、チームは強豪ロシア、スペインに次ぐ3番目のイスを死守した。より気分を引き締め、本番を見据えた完遂度の高い演技が披露されそうだ。

 昨年の世界選手権は5位に終わり、あらためてロシア、スペインら欧州の列強国との「表現力」の差を目の当たりにした。本間三和子シンクロ委員長は「日本の強みである完遂度、技術だけでは、現在の世界を見ると勝てない。芸術性を含め、演じることも同時に追求してきた」と言う。

 この冬の鍛錬期にはフリールーティンを一新した。「摩訶(まか)不思議ワールド」をテーマに、多くの楽曲を取り入れ、従来の日本にない芸術的な構成に仕上げた。チーム全員、くっきりと色分けされた同じ横じまの水着を着て練習。体が水上に出る高さと動きのズレがすぐに分かる工夫を凝らし、完遂度を高めてきた。1日8時間もプールに入り、通し練習はインターバルを挟まず多い日で7本やった。さらに腰や足首に合計1・5キロの重りを付けて泳ぐことで、体力強化も図った。おかげで曲の後半に息切れすることなく、最後まで演じ切れるように成長。日本伝統の高い完遂度は今回も健在だ。

 本間委員長は「チームのみんなが自覚し、努力している姿が見られる。前までは一方的に指導者のアドバイスを聞いていたが、今は選手たちだけで話し合って解決できるようになった。もう安心して見ていられる」。戦う集団へ、ムードが一変したことを明かした。

 デュエットでは、4月の世界最終予選で、昨年の世界選手権5位の乾友紀子(21)小林千紗(24=ともに井村シンクロ)組から小林・酒井麻里子(21=東京シンクロ)組に変更して戦った。エース乾が2月12日に左足首を捻挫し、3月半ばまでコンビ練習できなかったため。それでも小林は「酒井さんとは違和感なくやれました。毎日、ちょっとずつ『こうやった方がいいよ』と話し合っています」。フリー演技はブルガリア民謡を取り入れ「アジアからヨーロッパへの道をイメージしながら泳いでいます」(小林)。ロンドン本番は、どういう組み合わせになるのか未定だが、本間委員長は「誰が泳いでもいけるようにしています。不安はありません」と言い切る。

 チームも、デュエットも、世界を意識してチームづくりがなされた。その努力の成果を試されるのが、今回の日本選手権だ。今までの日本ではお目にかかれなかった摩訶不思議な世界が、辰巳を舞台に展開されるのか。ロンドン五輪を前に、新たなマーメイドジャパンをご堪能あれ。