アマチュアボクシング男子ミドル級のロンドン五輪代表で金メダル候補の村田諒太(26=東洋大職員)がプロの元2冠王者を圧倒した。17日、都内のワタナベジムで、元東洋太平洋、元日本スーパーウエルター級王者の柴田明雄(30)と3ラウンドのスパーリングを行った。開始20秒に右ストレートでダウン寸前に追い込むなど、終始プロ元2冠王者を圧倒。昨年の世界選手権銀メダリストは、48年ぶりのボクシング金メダル獲得へ、今後もプロとの実戦練習で技術を磨く。

 電光石火の一撃だった。プロの元2冠王者の柴田とのスパーリング。村田は開始20秒で、ノーモーションの右ストレートを顔面にたたき込んだ。ロープに吹っ飛んだ柴田がスパー後に「見えなかった。効いた」と振り返るほど強烈なパンチ。その後も、ワンツー、ショートアッパーなど多彩なパンチで、元2冠王者を追い込んだ。

 日本人プロのミドル級(69・8キロ以下)選手は、パワーがあっても、スピードに難のあるケースが多い。だが、アマの村田は別格。世界選手権銀メダリストの強さに柴田は「手も足も出なかった」と白旗をあげた。師匠の渡辺均会長も「もっと競ると思ったが…。あのまま続けたら倒されてた」と悔しがりながら、その実力を認めた。

 プロに対し、アマの意地もあった。スポーツ界ではプロが上との風潮があるが、それが村田には我慢ならない。「プロより弱いからアマじゃない。どちらにも上下はない」。世界選手権銀メダリストとしてのプライドを持って、プロとガチンコのスパーリングに臨んでいた。

 3連覇した昨年11月の全日本選手権以来、試合から遠ざかる。五輪はぶっつけ本番となるだけに、今後もプロとの真剣スパーが、最高の実戦練習になる。女子はしずちゃんを含め、五輪出場は消滅。「五輪は出たいといって出られるものではない。誇りを持って練習しないと」。64年東京五輪の故桜井孝雄氏(享年70)以来の日本人金メダルへ、ラストスパートに入った。【田口潤】

 ◆村田諒太(むらた・りょうた)1986年(昭61)1月12日、奈良県生まれ。南京都時代に高校5冠。東洋大進学後の04年に全日本選手権初優勝、06年のドーハ・アジア大会出場。07年の世界選手権は8強を逃し、北京五輪逃す。昨年10月世界選手権で日本人過去最高の銀メダルに輝き、ロンドン五輪出場権を獲得。身長182センチ。