<バドミントン:ヨネックス・オープン・ジャパン>◇5日目◇22日◇東京・国立代々木競技場

 バドミントン界のヒロインが、涙でラケットを置いた。今大会で引退を表明していた潮田玲子(28)が、池田信太郎(31=ともに日本ユニシス)と組んだ混合ダブルスで、インドネシアペアに9-21、11-21の25分で完敗。潮田は現役最後の試合となり、涙とともにコートを去った。

 涙をこらえきれなかった。6歳で始めたバドミントン。潮田、23年間のバドミントン人生が幕を閉じた。潮田のフォアのレシーブが、最後のシャトルだった。無情にもラインを割った。「感謝の気持ちでいっぱい。バドミントンは人生のすべてだった」。何度も観客席に手を振り、池田としっかりと抱き合った。

 完敗だった。相手の女子はロンドン五輪混合4位。実力の差を見せつけられて、わずか25分で最後の試合は終わった。有終の美はならなかった。しかし、05年大会で、オグシオとして3位になったのと同じ自身大会最高成績に、潮田は「頑張ってきた4年間が報われた」と悔いはない。

 競技だけではない。北京五輪前から、バドミントン界の広告塔として、走り続けてきた。写真集、DVDなどを出し、オグシオ以前には閑古鳥が鳴いていた会場には、潮田見たさに観客が鈴なりになった。「つらい時もあったけど、注目されて競技人生を送れたのは幸せだった」。

 今後は、スポーツキャスターに転身する。この日、初めて自ら明かした。「アスリートの目線で、伝える側になりたい。スポーツの発展に貢献して、挑戦していきたい」。具体的には、まだ決まっていないが、関係者によると、テレビ各局の争奪戦が続いているという。

 Jリーグ柏のDF増嶋竜也(27)との交際も順調のようだ。ロンドン五輪後も、柏の試合で応援する潮田の姿が目撃されている。2度の五輪出場に、女子ダブルスで07年世界選手権銅メダル。潮田が汗と涙で築き上げた公私ともに華やかな時代が、ついに幕を閉じた。【吉松忠弘】

 ◆潮田玲子

 しおた・れいこ。1983年(昭58)9月30日、福岡県苅田町生まれ。6歳でバドミントンを始め、九州国際大付高で全日本ジュニア・シングルスを制した。02年に三洋電機入社。04年から小椋久美子とのペアで“オグシオ”として全日本ダブルス5連覇。07年世界選手権銅メダル。北京五輪5位入賞。09年に池田信太郎と混合に転向し“イケシオ”を結成。ロンドン五輪1次リーグ敗退。166センチ、60キロ。家族は両親と兄。