実業団男子1部のパーク24柔道部監督で92年バルセロナ五輪金メダリストの吉田秀彦氏(43)が、来年の大会で現役復帰する意向を明かした。23日、東京・新宿区で自ら立ち上げたNPO法人「ビバ・スポーツクラブ」の設立会見に出席。会見終了後、ロンドン五輪で金ゼロに終わった男子柔道界に話題が及ぶと、競技人口の底辺拡大を訴えるとともにスター不在の現状を嘆いた。さらに、せきを切ったように話し始めた。

 吉田氏

 練習、今もやってますよ。絞れたでしょ?

 スターが出ないと柔道人気も出ない。だから来年の実業団個人戦かな。全日本選手権に出たいけど、予選には参加できないからね。金メダリストは特別に参加できるとか、そういうものがあるといいですけど。

 10年4月25日の試合を最後にプロ格闘家から引退。昨年5月にパーク24監督に就任し、柔道界に正式復帰を果たした。プロ活動後3年間は選手登録できないが、来春その凍結期間が解除される。4月29日の全日本選手権(東京・日本武道館)に出場するには3月の都予選を戦う必要があるため、間に合わない。ただし、8月下旬の全日本実業個人戦(兵庫・尼崎市)には参加できる。その計画が、しっかり頭の中にあった。

 あくまで4年後のリオ五輪を目指すものでなく、柔道界を盛り上げるための「カンフル剤」だ。吉田氏は先月、フランスを視察。そこで新興国の活気を目の当たりにした。「町道場に300人もいる。フランスの競技人口は100万人、日本が20万人だから5倍ですよ。こういう中からリネールのようなスターが出る」。日本を強くするためには底辺層の拡大が最優先。そのためにはヒーローが必要だ。だからこそ、自らが手を挙げた。「全日本のことは全日本に任せ、まずは自分のやれることをやっていく」。情熱ほとばしる43歳の決意がこもった。

 ◆吉田秀彦(よしだ・ひでひこ)1969年(昭44)9月3日、愛知県大府市生まれ。小4で柔道を始め、世田谷学園高-明大-新日鉄。92年バルセロナ五輪柔道男子78キロ級で金メダル。96年アトランタ、00年シドニーの両五輪に出場。97年2月に明大監督就任も02年に辞任し、プロ柔道家に転向。総合格闘技18戦10勝7敗1分けの成績を残し、10年4月25日に現役引退。昨年5月に実業団「パーク24」の監督に就任し、柔道界に復帰。2年前のサイズは、180センチ、104キロ。