【2月7日付日刊スポーツから】

 真央から「沙羅ちゃん」へ、沙羅から「真央さん」へ-。14年ソチ五輪まで7日であと1年に迫った。フィギュアスケートの浅田真央(22=中京大)と新競技の女子ジャンプの高梨沙羅(16=グレースマウンテン・インターナショナル)。最注目の2人にそれぞれ、互いの印象、ライバル、そして1年前の決意について語ってもらった。紙上の“対談”で、金メダル候補のいまに迫る。【取材・構成=松末守司、阿部健吾】

 2人の冬のヒロインが大輪の花を咲かせる時を待っている。1人は2度目の五輪で銀盤の新女王になるため、氷上を幾千回と跳んできた。もう1人は新たに採用される競技で、白銀の初女王になるため、幾千回と空を飛んできた。

 3年前、初出場した10年バンクーバー五輪は19歳だった浅田。華麗な滑りに、期待を一身に背負っていた。

 新競技の女子ジャンプで無類の強さを誇る高梨。五輪では初となる表彰台の頂点へ、いま期待は日々高まっている。

 2人はこれまで面識はない。ただ、冬季五輪で戦う先輩、後輩として、その姿は互いを刺激している。

 浅田

 16歳ですが、しっかりとしていてまじめな印象です。

 高梨

 すごくすてきで、物腰が柔らかく、それでいて、スポーツ選手として心(しん)の強さを感じます。その部分がすごく光っています。

 浅田は同じ10代で初五輪を踏むだろう後輩に、たくましさを感じている。高梨は6歳上の先輩へのあこがれを、日ごろから隠さない。そして、自分もそうなりたいと願う。

 高梨

 試合を見ていると引き込まれる気がします。すごくきれいな演技。自分も見ている人が楽しいと思えるジャンプを飛びたいと思います。

 どうすればそうなれる?

 浅田の答えはシンプル。そして、それは同時に後輩へのエールでもある。

 浅田

 (五輪では)練習が自分を支えてくれると思います。同じスポーツ選手として一緒にソチ五輪を目指して行きたいですね。

 氷上で8時間以上も滑り通しのこともある浅田。厳しい練習の積み重ねが向上となり、自信となってきた。だから、説くのは日々の大切さだ。

 ソチ五輪まであと1年。2人の共通点はライバルの存在にある。

 浅田には同学年の金姸児(韓国)がいる。バンクーバー五輪で金メダリストに。その後は休養していたが、五輪プレシーズンとなる今季復帰。国際スケート連盟(ISU)の公式記録ではないが、合計点で今季最高点を記録するなど、実力は健在。3月の世界選手権(カナダ)で11年の同大会以来、2年ぶりに同じ試合で争う。

 浅田

 (バンクーバー五輪前は)やはり(金に)勝ちたいという思いが強くなってしまう時もありました。しかし、それは自分を成長させてくれたし、強くしてくれていたのだと思います。いまは自分のやってきたこと、自分の滑り、表現したいこと、自分が目指している技術を成功させることに気を付けてます。

 高梨のライバルはくしくも、同じ名前の「サラ」。米国の18歳サラ・ヘンドリクソンは、昨季W杯で13戦9勝して総合優勝、今季も五輪プレ大会となった2月ソチ開催のW杯で優勝するなど2勝を挙げる。

 高梨

 ずっと目標にしてきた存在。彼女の勝負強さ、技術、安定性を見習いたいなと思います。

 切磋琢磨(せっさたくま)の先にある夢舞台まで365日。あらためて五輪とは-。

 浅田

 バンクーバーが終わった後、すぐは悔しい気持ちでした。でも、今まで小さな時から夢だった五輪に出られたことは良かったですし、メダルを取れたこと、トリプルアクセルを跳べたこと、ショートもフリーも自分の全てを出せたこと、五輪までの全てが思い出です。大きな舞台を経験して、気持ちが強くなったと思います。いまはソチ五輪がとても楽しみです。出場できるように頑張ります。五輪シーズンは曲やプログラムも大切になってきます。最高の舞台で、自分の最高の演技ができるようにしたいです。

 高梨はその道を歩いている途中だ。女子ジャンプは99年に国際大会が実施されたが、10年バンクーバー五輪の採用は見送られた。世界選手権が始まったのは09年。苦節を味わいながら先人たちが築いてきた道の続きを、高梨は歩いている。

 高梨

 ずっとあこがれていた五輪で正式種目に採用されました。女子ジャンプをずっと引っ張ってきて下さった先輩たちの夢がかなって、やっと報われたと思いましたし、自分の夢でもあったのでうれしい気持ちでした。今は五輪が目標としてあるので、やるべきことが明確になりました。1試合1試合を大事に戦っていきたい。まだ、安定性と精度に欠けている。そこをレベルアップさせたい。

 初めての思い出を、より楽しい思い出で塗り替える舞台。あこがれの先に、初めての思い出を刻む舞台。真央と沙羅、2人の日本のヒロインを迎える冬の祭典の足音が近づく。

 ※おことわり

 浅田、高梨それぞれ別に取材を行い、対談形式に構成しました。