女子レスリングの栄和人強化委員長(52)が、16年リオデジャネイロ五輪での全階級制覇を宣言した。4月にスタートした新強化体制のもと、全日本女子が8日、東京・北区の味の素ナショナルトレセンで合宿入り。吉田沙保里(30)伊調馨(28)らが軽快に汗を流した。63キロ級以下は有望な若手も育つが、全階級金メダルへカギは72キロ級。栄委員長は、他競技の選手への転向まで呼びかけた。

 栄委員長の言葉に、力がこもった。「周りはロンドンの金メダル3個で、よくやったと言ってくれた。でも、私はそう思わない」。新体制での練習初日、吉田や伊調が参加したリオへ向けた最初のミーティング。「全員に狙ったメダルをとらせる。金メダル4個が目標」。真剣に聞き入る選手たちの目が光った。

 吉田の55キロ級、伊調の63キロ級は若手の成長もあって期待がもてる。48キロ級も昨年世界選手権2位の登坂らが伸びている。「問題は72キロ級。ここが難しい」と栄委員長は話す。ロンドン五輪代表の浜口京子は休養中で、復帰時期は未定。若手もいるが、国内無敵の浜口がいたために経験不足だ。

 厳しい最重量級の現状を考え、栄委員長は仰天プランを口にした。「体の大きい選手がほしい。柔道や陸上から転向してほしい」。吉田に迫る55キロ級の村田は柔道からの転向組。陸上の投てき種目には、体格のいい選手が多い。「鈴木(博恵)や新海(真美)らにも期待するが、海外勢との体格差がある」と話した。

 もちろん、72キロ級の選手たちはリオへ本気。アジア選手権(18日~、インド)代表の鈴木が「アジアでいい結果を出して、昨年1回戦負けした世界選手権につなげたい」と話せば、67キロ級で世界2位の実績を持つ新海も「体格差はあるけれど、日本レスリングが強いところを世界に見せたい」と言った。いずれも目標はリオ五輪の金メダル。最後の五輪になるかもしれない本番まであと3年。栄委員長は「全階級で優勝を目指せるチームを作るのが私の仕事」と言い切った。【荻島弘一】