全日本柔道連盟(全柔連)理事による女子選手へのセクシュアルハラスメント(性的嫌がらせ)問題で24日、福田二朗理事(76)が理事職を辞任する決意を固めた。日刊スポーツの取材に応じ、11年12月に都内で起こしたわいせつ行為の事実を認めた。東京都柔道連盟の会長職についても、辞任を願い出る。全柔連はこの日、特別調査チームを発足させ、福田理事と女子選手に対し、週明けに聞き取り調査をすることを決めた。

 「事実です。後悔しています」。記者と向き合った福田理事が切り出した。「なぜこんなことをしてしまったのか」と11年12月の事件を振り返った。

 都柔連の行事後に仕事仲間と入った春日駅近くの居酒屋で、仕事上関係のある被害者女性と偶然一緒になった。合流して5人で飲食。その後、女性とその友人の帰路が同方向だったため、都営三田線に乗車。「巣鴨においしいすし屋があったので誘った」という。3人で日本酒を飲み、「その後は細かい点は分からない」と打ち明けた。

 明確なのは、巣鴨駅の地下鉄のエレベーターに2人で乗ったこと。高島平駅の女子トイレ前で女性を待っていたこと。駅近くの交番でタクシーに乗って警察官に送られる女性を見たこと。「どうやって家に帰ったかもあいまい」という。

 ただし、「常軌を逸したと思う。記憶の中では、キスしようとしたのではないか」と認める。そして「トイレで彼女が怖がっていた」こともおぼろげに記憶にある。トイレに逃げ込んだ女性は電話で友人に助けを求め交番に駆け込んだが「その友人には会っていない」。巣鴨から高島平まで電車で移動したが、「まったく覚えてない」とした。

 相手は仕事上の関係者で30代の女性。柔道の試合には出場しておらず「形」競技の選手という。事件の3日後に「本当に申し訳なかった」と謝罪。女性がうなずいたため、了解してもらったと思っていた。前日23日、事件が明るみに出た。被害者の女性から連絡を受けたバルセロナ五輪銀メダルの溝口紀子氏が、報道陣に経緯を暴露。福田氏はこの日の朝刊を読み「終わったと思っており驚いたが、責任を取らないといけないと思った」と、全柔連理事と都柔連会長の座を辞任することを決断。週明けに辞任願を各組織に提出する。

 この日は女性から連絡を受けたソウル五輪銅メダルの北田典子氏が都内で取材に応じ、事件の詳細の訂正も行った。前日に溝口氏は女性が他の理事に相談したとしたが事実はないことが明らかになった。被害者女性に理事を訴える意思もなく、「間違った事実が伝わってしまった」と北田氏は慎重に事実関係を整理しながら再度説明した。

 今後は発足した特別調査チームの聞き取りを受ける。全柔連に関する辞職願は、6月11日の理事会で承認される。【阿部健吾】

 ◆23日のセクハラ事件発覚

 都内で開かれたシンポジウムに出席した溝口氏が、全柔連の現職理事が女子選手にわいせつ行為を行っていたことを暴露。現在も精神科に通う女性から13日に相談を受けており、「性的関係を迫られたと感じてもおかしくない行為」と説明した。21日に代理人となった境田弁護士も同席し、「行為は強制わいせつにあたる」とし、理事の辞任を求める方針を示した。