【ニューヨーク4日(日本時間5日)=吉松忠弘】テニスの全米オープンで日本男子96年ぶりの4強入りを果たした錦織圭(24=日清食品)が、日本選手の4大大会史上初となる決勝進出を誓った。準々決勝から一夜明けて、6日(同7日)のノバク・ジョコビッチ(セルビア)との準決勝に向けて調整。日刊スポーツの単独インタビューに応じ、世界1位を破っての決勝進出に自信をみなぎらせた。

 いよいよ世紀の一戦を迎える。錦織が挑むのは4大大会7度の優勝を誇るジョコビッチだ。

 「絶対に勝って決勝に行きます」

 何度もうなずき、自らにも言い聞かせた。準々決勝の後、89年全仏で優勝したコーチのマイケル・チャン氏に「まだ終わっていない」と言われたという。「いつも、『相手がジョコビッチだろうがナダルだろうが、負ける相手はいないと思え』と言われている」。

 ジョコビッチとの対戦成績は1勝1敗。11年スイス室内の準決勝で、日本男子として初めて世界1位を破った。「3年前だし、あまり意味はない」と冷静に構えるが、続けた言葉には自信がうかがえた。

 「3年前とは自分は違う選手。相手よりも、自分の方がレベルアップしているし、精神的にもテニスも強くなっている。前に勝ったことは自信にはなるが、その時よりも、今回の方が、より勝てる可能性は広がっている」

 4回戦、準々決勝ともに最初のセットを落とした。同じような展開では、ジョコビッチに押し切られる可能性もある。「出だしから、もうちょっと攻める気持ちを持っていきたい。相手はどこからでも、どこにでも打てる選手。展開も速いので、それについていくこと。スタートからラケットを振り抜いて、相手を振り回していきたい。それには、少しでも(ベースラインから)前に入ってボールをたたきたい」。作戦はイメージできている。

 8月4日に右足親指の母指球脇にできた腫れ物の切開手術を受けた。同19日に抜糸し、25日に開幕を迎えた。「悪化するのが怖くて、ちょっと出たくなかったのが本音です。(開幕)5日前でもメチャクチャ痛かった。でも、次の大会まで3週間ほどあったから、少し痛めても大丈夫かなと出場を決めた」。1回戦をストレートで勝ち、手応えをつかんだ。日に日に痛みは減り、気持ちも楽になった。本来の動きが戻り、4強進出の快挙。9日発表の最新世界ランクでトップ10への復帰も決まった。

 全米にデビューした08年に16強入りした。その時は「上の空だった」が、今回はまったく気持ちが違う。「うれしいけど、そんなに舞い上がっている感じはない。もう、そんなに喜んでいる場合じゃないレベルに自分は来ていると思う。まだ、こんなものかなと(笑い)。そう言っておきます」。笑みの向こうに、世界をつかむ自信がみなぎっていた。

 ◆11年スイス室内VTR

 1回戦で世界7位のベルディハ(チェコ)を破り、準決勝まで勝ち上がった。第1セットは第1サーブが24%しか入らず自滅した。第2セットは4オールから2ゲーム連取して奪取。最終セットは6-0の完封勝ち。同年、ジョコビッチが唯一1ゲームも奪えないセットだった。錦織は決勝ではフェデラー(スイス)に敗れた。