<飛び込み国際大会派遣選手選考会>◇第1日◇7日◇東京・辰巳国際水泳場

 女子飛び込み界に、また東京五輪の星が現れた。16歳の佐々木那奈(JSS宝塚)が1位となり、世界選手権(7月・ロシア)代表の座を確実にした。20年東京五輪のために昨年、高知市の親元を離れてJSS宝塚入り。1学年下で同じ所属の板橋美波(15)と競い合うように練習し、その板橋を破っての1位で来年のリオデジャネイロ五輪まで視野に入ってきた。

 水しぶきの立たない完璧な入水で、佐々木が大技を決めた。決勝4本目の「後ろ宙返り3回半抱え型」。82・50の高得点にスタンドが沸いた。5本目もきれいに決めて板橋を抑え1位。「実感がないです。まさか1位になれるなんて」。多くの報道陣に囲まれて、戸惑ったように話した。

 馬淵崇英コーチが「本番に強い。今日は100点」と驚くほど、試技の内容は完璧だった。予選は4位だったが、決勝は次々と入水を決めた。これまでベストの307点を大きく更新する370点超え。「馬淵コーチに、今までで一番ほめられました。宝塚に来てよかった」と笑った。

 13年9月、東京五輪決定が転機だった。「東京五輪に出たい。そのために、強くなりたい」。同年12月から週末の宝塚通いを始め、悩んだ末に14年3月から単身生活。「最初は寂しくて仕方なかった」が、五輪への思いが寂しささえ忘れさせた。「東京五輪が決まらなければ、高知を離れることもなかった」と、母理江さん(44)は話した。

 中学時代から競い合ってきた板橋の存在も刺激になった。筋力もあり、回転スピードもある「後輩」についていくことで、実力をつけた。競技を離れれば一緒に映画を見たり、食事をする仲。理江さんは「那奈が頑張れるのも、美波ちゃんがいるから。練習は厳しいけれど、2人で息抜きもしていますよ」と話す。

 7月の世界選手権で決勝(12位まで)に残れば、リオ五輪代表に内定する。この日の得点なら、切符獲得は十分に可能。もっとも、佐々木の夢は出るだけでは終わらない。「世界選手権ではトップを狙いたい」と世界の頂点を目指して言い切った。【荻島弘一】