大関琴欧洲(25=佐渡ケ嶽)が異例の「ニワトリ追い」げいこで綱とりを目指す。2日、千葉・松戸市の佐渡ケ嶽部屋で、名古屋場所(7月13日初日、愛知県体育館)に向けたけいこを開始。佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)から、腰を低く落として両側から挟み込む元横綱朝潮の「鶏追いの型」を指導された。型を完成させるため、名古屋場所前にニワトリを追うけいこも計画された。

 幕内最長身202センチの大関が、体高50センチの相手に勝負を挑む。綱取り場所に臨む琴欧洲に、佐渡ケ嶽親方が奇想天外な特訓を提案した。「名古屋場所では宿舎の隣が幼稚園。そこに本当のニワトリを放そうかな。(琴欧洲が)捕まえなきゃ、ちゃんこは野菜だけとかにしてね」。

 冗談ではない。相撲界にふるくから伝わる「鶏追いの型」を、琴欧洲に伝授するのが狙いだった。「腰を落として、両側から挟み込んで、ニワトリを追うような形で前に出るんです」と同親方。腰高といわれる琴欧洲の欠点を修正した上で、体格差を最大限に生かすことができる。

 この形は59年(昭34)に第46代横綱に昇進した朝潮が得意としていた。右上手を浅く引き、左ハズ押しで一気に押し出す取り口。189センチの長身を生かして、栃若時代を築いた栃錦(178センチ)初代若乃花(179センチ)ともほぼ互角の成績を残した。「先代(元横綱琴桜)から、それを欧洲に教えてやれと言われていた」と同親方は明かした。

 この日のけいこでは若い衆に胸を出す琴欧洲に、同親方から「挟みつけて持って行け」の指示が何度も飛んだ。琴欧洲は「(挟み込むように攻めることは)いつも言われている」。角界では異例の「ニワトリ追い」げいこが、綱を一気に引き寄せるかもしれない。【来田岳彦】