<大相撲初場所>◇7日目◇17日◇東京・両国国技館

 横綱朝青龍(28=高砂)が、土俵上でブチ切れた。初顔の西前頭2枚目嘉風(26)の張り手をアゴに受けて激怒。逆転の突き落としで初顔相手の連勝を29に伸ばしたが、怒りは収まらず、懸賞を受け取る最中も嘉風をにらみつけた。初日から7連勝で進退問題からは事実上脱したが、再び横綱としての品格が問われる一番となった。4連覇が懸かる横綱白鵬(23)と東前頭12枚目栃煌山(21)も7連勝となった。

 朝青龍が、我を忘れた。小兵の嘉風にもろ手突きで立ち合ったが、相手は思うように離れず、突っ張り合いに。その中で右アゴに受けた強烈な1発の張り手で、怒りのスイッチが入った。冷静さを失っての強引な首投げはすっぽ抜けて、足を俵にかけて大あわて。その後、出てくる相手の勢いを利用して左からの突き落としを決めるも、ケンカ相撲は終わらない。土俵外に足を出していた嘉風を追って背後からダメ押しだ。

 勝負がついたらすべて終わり。それが相撲の鉄則だが、ブチ切れた朝青龍には通用しない。勝ち名乗りを受けても、嘉風から目を離さない。懸賞を受ける最中も、メンチを切り続けた。支度部屋に戻っても怒りは収まらず、取材陣には一切無言。地下駐車場に向かう通路では「初顔29連勝だが?」「張られて怒っているのか?」「自分の相撲に納得いかないのか?」と立て続けに質問されたが、記者を手で払うなどして仏頂面のまま車に乗り込んだ。

 初顔ゆえに、余計に怒りは大きかった。人一倍警戒心の強い朝青龍は、これまでは場所前の出げいこなどで、対戦が予想される初顔を研究。時にはぶつかりげいこでの「かわいがり」で相手に恐怖心を植え付けるなどして場所を迎えていた。しかし、進退のかかる今場所前は、自分自身の調整で精いっぱいで、嘉風対策まで頭が回っていなかった。出番前になって千代大海に「嘉風はどんな相撲を取る?」と質問。不安を抱えたまま土俵に立っていた。

 結果は逆転勝ちで初日から7連勝、初顔相手の連勝も29に伸ばした。朝青龍らしいケンカ相撲に、午前9時15分に札止めになった両国国技館の観客の大半は大喜びだが、一部のファンからは「ああいうところが朝青龍のダメなところ」の声も漏れた。昨年末、日本相撲協会が開催した「相撲研修会」では、協会側から「土俵は神聖な場所。リングではない」との指導があったが、朝青龍の心には届いていなかったようだ。【柳田通斉】