大相撲時津風部屋の序ノ口力士、時太山(当時17=本名・斉藤俊さん)が07年6月に暴行死した事件で、傷害致死罪に問われた元親方の山本順一被告(58)の第3回公判が24日、名古屋地裁で開かれた。検察側の証人として兄弟子2人が出廷。ちゃんこ番だった兄弟子は、山本被告が否定する暴行指示があったことや、同被告が時太山死亡当日朝も暴行していたことを明かした。25日には、同罪で有罪判決を受けた兄弟子が証人として出廷する。

 ちゃんこ番は見ていた。先に証言台に立った兄弟子は時太山の死亡当日、ちゃんこ担当だった。けいこを早めに切り上げ、調理場にいると「親方に『斉藤を呼んでこい』と言われた」。時太山を調理場隣の支度部屋へ連行すると、暴行を目撃したという。「持っていた棒で斉藤さんの腕をたたいていた。1回ではなかった。何を言ってるかわからなかったけど、(親方は)怒っていた」。

 証拠品の長さ1メートル強、太さ5センチほどの棒が持ち出されると「間違いないです」。元師匠の視線に動じることなく「親方は(やる気があるなら部屋に来いと言った)前夜、部屋にこなかったから怒ったと思う」と続けた。前夜のビール瓶殴打から、時太山が倒れたぶつかりげいこ。証言通りならば、その間も暴行が続いていたことになる。

 さらに「暴行を指示していない」という山本被告の言い分も、真っ向から否定した。25日夜に同被告が時太山をビール瓶で殴ったあと「『お前らもやってやれ』と言われた。自分の記憶ではそうです」と証言。13日に出廷した兄弟子は「(指示は)聞いていない」と言ったが、法廷で初めて師匠の暴行指示を明かした。

 また、同被告夫人であるおかみの隠ぺい指示も明かした。この兄弟子は25日夜の同被告のビール瓶殴打後、おかみと一緒にちゃんこ食材の買い物に出かけた。おかみが「親方がビール瓶で殴ったの久々に見たわ」と話したと証言。その後「今日は私はいなかったことにして」と依頼されたという。

 証言中、山本被告は首をかしげるなど、不満そうな表情を浮かべた。弟子に責任を押しつけた師匠への反撃。25日には、同罪で執行猶予付きの有罪判決を受けた兄弟子の証人尋問が始まる。