不祥事続発の日本相撲協会が、野球賭博問題を契機に大改革を迫られた。外部有識者によって発足した、同協会の特別調査委員会は24日、東京・両国国技館で会見。上申書で野球賭博への関与を申告した29人のうち、この日までに21人に対して事情聴取を行ったことなどを報告した。座長で早大特命教授の伊藤滋委員(78)は今後、同委員会を「改革委員会」として発展させる必要性を訴え、不透明性が長年問題となっていた、年寄名跡(年寄株)の取得にも関与するなど大手術に取り組む意欲を示した。

 伊藤委員は、相撲協会の浄化に「2年は必要」と訴えた。賭博問題だけではなく、最近は暴力団観戦問題、大麻不法所持、力士暴行死事件など、不祥事を続発させている。同委員は「単に野球賭博だけではない。維持員とたまり席の問題もある。もしかするとそれ以外にも」と、賭博問題が解決した後も課題は山積と指摘。相撲協会を健全な体質にするため「調査委員会ではなく改革委員会へ」と、外部の厳しい監視の目は長期的に必要と訴えた。

 一般販売されていない土俵近くの「維持員席」と呼ばれる特別席で、暴力団関係者が観戦した問題の解決が、当面は賭博に次ぐ課題だ。だが伊藤委員は「世の中にいろいろと、うわさされていることがあるでしょ」と切り出し、具体例として「年寄の問題とか」と話した。年寄名跡を巡っては、これまでにも問題がたびたび起きていた。金銭譲渡を禁止する規定はなく、数億円の高値取引がうわさされるなど、実態不明の中で継承されてきた歴史がある。年寄名跡というトラブルの種がある限り、再び不祥事が起きると考える。

 長年解決されなかった問題への着手が、相撲界にはびこる不祥事の温床を根絶やしにすることになる。協会の外部監事で、元警視総監の吉野委員は健康志向の昨今に例えて「相撲界の場合は残念なことに、世の中は体質改善が進んでいるのに、関心がなかった。あるいは気をつける努力ができなかった」と、相撲界が時代遅れであると指摘した。

 伊藤委員は他にも「部屋の問題」と、テレビ番組などで指摘されている、相次ぐ独立で細分化された部屋制度で、指導が行き届かない点などにも触れた。賭博問題が起きて以降、武蔵川理事長(元横綱三重ノ海)は常々「ウミをすべて出し切る」と話してきた。外部有識者によって、今までは“閉鎖”されてきた内部からの大手術が始まろうとしている。