12日に就任した日本相撲協会の放駒理事長(62=元大関魁傑)が13日、「ソフト路線」で業務をスタートさせた。契約解除問題で揺れたガバナンス(組織統治)の整備に関する独立委員会の望月浩一郎アドバイザー(53=弁護士)と約2時間も会談。人間的対応で、保留していた業務の契約続行を取り付けた。暴力団排除の宣言を急ぐ一方、役員人事には慎重な姿勢を示すなど、派手さよりも地に足を着けた改革に意欲を示した。

 新理事長としての初出勤前、放駒理事長は知人の葬儀に参列した。その後、国技館の役員室に入り、初めて理事長席のいすの感触を確かめた。報道陣に心境を問われると「(就任が)昨日といっても、さっきという感じ。緊張していますよ」と正直に言った。

 話せる新理事長は、就任直後の前夜から心ある対応を見せていた。帰り際、望月氏に「ほんとに不快な思いをさせて申し訳ない」と声を掛けた。協会の不手際で、契約解除を通達した約3時間後に続投要請した相手に、誠意を見せた。

 一夜明け、午後1時すぎからは、望月氏と会談した。独立委アドバイザーなど、任された6つの業務の続行を了承してもらった。望月氏は「ああいう風に言ってもらえるなら…」と、前夜の言葉が和解のきっかけになったことを認めた。放駒理事長は「よかったね」と、軟着陸に笑顔をみせた。

 このほか、協会再生へ向け、「暴力団排除の宣言は、できるだけ早くやる」と話した。自身が務めていた巡業部長の後任も、来週中にはめどを付けることを約束した。将来的な外部役員の登用について「理事か監事か分からないが、可能性はある」とも言った。

 一方で、執行部の入れ替え、独自案による新委員会の立ち上げなど、意図しない「変化」を誘発する質問には、乗らなかった。約12年間の現役時代、休場はゼロ。「休場は試合放棄」の名言を残し「クリーン魁傑」の愛称で親しまれた新理事長は、立場が変わっても地に足を着けた。

 監督官庁の文科省は「(理事長は)必ずしも外部にこだわっていない。これまで通り、協会改革を推進していただきたい」と期待を寄せた。この日、東京・杉並の放駒部屋には、花や大量の祝電が届いた。愛される相撲協会になるべく、新理事長が動きだした。