「大関豪栄道」が今日30日、正式に誕生する。大相撲の番付編成会議と臨時理事会を経て、愛知・扶桑町の境川部屋で伝達式が行われる。くしくも30日は境川親方(元小結両国)の52歳の誕生日。豪栄道(28)は運命的絆で結ばれた師匠に、最高のバースデープレゼントを贈ることになった。

 不思議な巡り合わせだった。悲願の大関昇進が決まる日は、境川親方の52回目の誕生日。伝達式を翌日に控えた豪栄道は「親方の誕生日にめでたい日を迎えられて、すごい良い縁を感じます。いい恩返しになる」と、しみじみ話した。

 出会いは埼玉栄高3年の秋だった。第一印象は「怖そうだな」。それでも「この人なら一緒に喜び、怒ってもくれる」と信じ、懐に飛び込んだ。名古屋場所でも、愛のムチで開き直れた。6日目の勢戦で引き技を連発して2敗目を喫し部屋に帰ると「中途半端に負けるんなら、思い切って自分の相撲をして負けろ」と激怒された。「それで切り替えられた」と豪栄道。「自分のことより真っ先に弟子を思ってくれる」。厳しく愛情あふれる師匠がいなければ、大関もなかった。

 師匠にとっても、運命的な弟子だった。03年に姓名判断の女性から、下の名前を秀昭から「豪章と書いてヒデアキと読むのが合っている」と言われて改名。その時「豪という字は、数年後に縁のある人間が来ますよ」と言われ、2年後に入門してきたのが沢井豪太郎(豪栄道)だった。「これか!

 と思ってゾクッと来た」と境川親方は振り返る。自身の誕生日に愛弟子の大関が決まることには「心は20歳。いらんことしてくれたなあ」と目を細めた。

 そんな師匠と並んで迎える伝達式。注目の口上は「分かりやすく、男らしい感じのやつがいいですね」。部屋には紅白の幕が掛かり、地元の大阪・寝屋川市役所でも「祝大関昇進おめでとう」の垂れ幕を下ろす準備を整えた。待ちに待った瞬間が、いよいよやって来る。【木村有三】