原監督といえば、超攻撃的な野球をする監督というイメージがあるだろう。昨季までヤクルトのコーチとして巨人と戦ったが、こちらが少しでも隙を見せると「これでもか!」というくらいに攻めてくる。今試合も同じだった。

昨季を思い出し、思わず苦笑いを浮かべてしまったのが6回の攻撃だった。岡本のソロとパーラの2ランで逆転した後。大城と田口が連続二塁打で追加点を奪うと、ヤクルトは左腕の中沢にスイッチ。ここで原監督は田口に代走を送り、1番の吉川尚に代えて代打に中島を送った。

立ち上がりに2点を失った田口だが、立ち直りの気配を見せていた。球数もまだ83球。体力的に怪しかったのなら、打席には立たせなかっただろう。もう1イニングは引っ張ると思っていた。しかし、ヤクルトベンチが継投策に出たとたん、一気に攻撃に転換。追加点はならなかったが「もう1点を取りにいく」というすさまじい執念を感じた。

しかし、結果的にこの攻撃が裏目に出た。リリーフした左腕の高木が村上にソロを打たれ、1死一、二塁から代打の荒木に対して右腕の宮国にスイッチ。宮国は痛恨の四球を与え、代打の青木に逆転の二塁打を浴びた。その後も4番手の藤岡が山田哲に満塁弾を浴びた。この回一挙7点を失い、試合は決まった。

巨人は普段から攻撃野球に徹しているだけに、ベンチワークが間違っているとは思わない。普段やらないような野球をやって負けたとき、チームにはダメージが残る。例えば守りの野球をするチームが攻めて失敗したり、攻める野球をやってきたチームが守りに入って失敗したケース。選手の立場でも「自分たちの野球を貫いて負けた結果」と割り切れる。逆転負けとはいえ、ダメージが残らない負け方だったのではないか。あらためて、原監督の実践する野球は見ていて面白いと感じた。「こういう戦い方があるんだな」と勉強になった。(日刊スポーツ評論家)