甲子園663日ぶりの勝利を目指して先発した阪神藤浪晋太郎投手(26)は、7回途中4安打4失点、6四球で降板。2点のリードを許し、2番手望月にマウンドを譲った。

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藤浪の5回までの投球内容は良かった。フライアウトは1つだけで、ツーシーム系の真っすぐでゴロをうまく打たせていた。投球フォームを見れば、下半身の動きと腕の振りのバランスがよかった。序盤に鈴木誠やピレラの打席では抜け球が見られたが、それが尾を引くこともなかった。打者がボール球に手を出し、空振りする場面が見られたが、やはり球威がある証拠だ。球質もよかった。

残念なのは6回だ。先頭の西川に150キロ直球をセンター前に打たれた。この後、3番堂林に対しては、カットボールが明らかなボールとなったが、それでも捕手は要求し続けた。全球カットボールで四球。続く鈴木誠にもカットボールでカウントを悪くして歩かせた。それが満塁弾の伏線になった。松山の打席からは変化球の選択肢が消え、ストレートばかりになり、ピレラにも真っすぐ1本で狙われた。配球面でそういうシチュエーションを作ってしまった。

なぜ堂林の場面で、ストライクが入りそうにない球を投げ続けたのか、大きな疑問が残る。5回まで真っすぐはそれほど打たれていない。ホームランでも同点だ。カウントが悪くなって、窮屈になる状況が藤浪にとっては良くない。気持ちよくストライクを投げられるようなボールをチョイスする必要があった。

満塁本塁打で4点を取られたが、もう1度チャンスを与えてもいい内容だ。課題のコントロールは、昨年に比べても改善されている。先発ローテーション投手といっても、すべての投手が貯金を作れるわけではない。藤浪はもともと期待値の高い投手ではあるが、現状では先発6人目の位置にいる。1勝1敗で勝率5割の投手も必要だ。5回まで0点に抑えたという結果もある。復活かどうかは1試合だけでは分からないが、この日の投球を見ると、藤浪は勝ち負けのできるレベルにある。(日刊スポーツ評論家)