広島ケビン・クロン内野手(28=ダイヤモンドバックス)がシート打撃の合間に防球ネットの前でスイングを確認していた。意識していたのは左肘を外側に抜きながら右腕を押し込むスイング軌道。巨人坂本のような内角打ちだ。左肘を抜かずに内側に畳みながら右腕を押し込むとアッパースイングになる。下からの軌道になると、球を点で捉えることになり確率が下がっていくが、線で捉えようとしているのは感じられた。

かつて在籍したエルドレッドは腕の使い方が硬かったが、クロンは器用そうだ。3Aながら、19年に38本塁打だけでなく、打率も3割3分1厘と率も残せるタイプの可能性がある。シート打撃を見ても、ボールゾーンは簡単には手を出さずに、見極めていた。

現役時代、新外国人が来日すると「何が打てて、何が打てないのか」をまず確認していた。1打席目はすべて直球、2打席目はすべて変化球を投げさせ、どう対応するか観察していた。この日のクロンは、2打席目に2ボールからの直球を左前打したように、真っすぐには反応できていた。ただ、ファーストストライクの変化球は振らなかった。日本のバッテリーは直球に対応できていると感じたら、徹底して変化球に切り替えてくる。早いカウントで変化球を捉えられれば、攻めにくくなる。ここが今後の成功のカギになってくるだろう。

クロンが機能するか、しないかで広島の陣容は大きく変わってくる。鈴木誠が長距離砲の役割を一身に担ってきたが、クロンが後に控えていれば負担が分散される。守備もスローイングは安定していると聞くし、一塁か三塁で固定できれば、松山、長野が代打で控えられ、層が厚くなる。多くの新外国人が来日できていない状況の中だからこそ、注目したい助っ人だ。(日刊スポーツ評論家)

練習中、言葉を交わす広島クロン(左)と鈴木誠(撮影・前田充)
練習中、言葉を交わす広島クロン(左)と鈴木誠(撮影・前田充)