長いシーズンを戦えば記録に残るミスは出てくるが、記録に残らない無駄なミスをいかに減らせるか。阪神が優勝するためには、ここからの残り試合はそのことが今まで以上に大事になる。

4回の攻撃で先頭の梅野が出塁し、二保がプロ初の犠打を成功。得点圏に走者を進めて近本が右前に落としたが、梅野が本塁に突入してアウトになった。右翼手の鈴木誠の好返球はあったが、2点リードで2番糸原からクリーンアップにつながることを考えれば、藤本三塁コーチャーが回したのは判断ミスだったと言える。

そのまま糸原が凡打に倒れれば流れが広島に傾くところだったが、右前打でもう1度チャンスを演出し直した。サンズ、大山の連続本塁打で大勢は決したが、糸原は試合の流れ、雰囲気を打線の中で一番感じ取れる選手。1打席ごとに意味のある打撃をしている。糸原が機能すれば、他の打者が機能できると言えるほど打線のポイントになっている。逆に止まれば、打線全体が止まるぐらい今後のカギを握っている。

そんな糸原も守備においてはミスが出た。直後の5回1死一、二塁で、菊池涼の遊ゴロは併殺打が取れる強い当たりだったが、糸原の一塁送球がワンバウンドになり、併殺崩れ。失策はつかないプレーで、次の小園の遊直で失点には結びつかなかったが、相手につけいるスキを与えてはいけない。

猛追する2位巨人はミスの少ないチームだ。失策数はリーグ最少の31個。阪神は対照的にリーグワーストの58個だ。近年に比べれば減ってきている印象はあるが、まだまだ目に見えないミスが目立つ。18年にリーグ優勝した広島、西武はミスが多く、ともに防御率4点台だったが、カバーできるぐらいの打線の破壊力があった。

今の阪神打線にそこまでの力はない。打った打たないに注目が行きがちだが、準備を丁寧に行い、その場において理解度の高いプレーを重ねれば、優勝が見えてくる。(日刊スポーツ評論家)