セ・リーグの優勝争いを予想するのなら「菅野の状態」を抜きに語れないと思っていた。それだけに後半の初先発になる今試合の内容は、とても重要だった。結果は6イニング5失点。はっきり言うと、球界を代表するエースの成績として見れば物足りない。しかし「ダメというほど悪くない。でも大丈夫といえるほど良くはない」という評価しかできない内容だった。
一番の不安点はクロスに決まる真っすぐ。菅野の場合は右打者の外角と左打者の内角に決まる真っすぐになる。この球がシュート回転せずに決まると、右打者は外角へ逃げるスライダーの見極めが難しくなるし、左打者は内角に差し込まれる。打者にとっては「気になる球」になるため、他の球種や他のコースへ投げ分ける球への対応がおろそかになる。しかし、投球の“原点”になる真っすぐが、まだ万全ではなかった。
初回、左打者の坂倉に打たれたソロは、内角を狙った真っすぐがシュート回転して甘くなった。この1発以降、左打者の内角にはカットボールを主体にしたピッチングに切り替え「なんとかしのいだ」という感じだった。
現状で勝てるピッチングをするなら投球以外の“助け”が必要だろう。初回の鈴木誠の2ランも、6回の菊池涼の2ランも、外角へのスライダーが甘くなったもの。鈴木誠も菊池涼に対しても、内角への厳しい攻めは1球もなかった。2球とも失投ではあるが、仮に内角を厳しく攻めていたら打ち損じていた可能性はある。左打者に対しては、今試合の2回以降の投球のように内角のカットボールを有効に使った方がいい。打者が「内角のカットボールには手を出してはいけない」と思うような場面でしか、内角の真っすぐは投げない方がいい。
打者の目線からすると、まだ左肩の開きが早く、球が見やすい。そして左肩の開きが早いから真っすぐがシュート回転するのだろう。ただ、4回の安部の見逃し三振と、6回の鈴木誠の空振り三振は、クロスの真っすぐだった。この2球はシュート回転せずに決まっていた。「投げられない」というわけではないだけに「ダメというほど悪くない」という評価になる。「大丈夫といえるほど良くはない」としたのは、まだここへの投球に安定感を感じないからだった。
ヤクルトでコーチをしていた2018年のCSで、菅野にノーヒットノーランをやられた。個人的にはそのときのイメージが強く残っている。それだけに評価の基準が高くなってしまうが、菅野が本来のピッチングができるかが、優勝の行方の大きなカギを握っているという考えは変わらない。(日刊スポーツ評論家)




