阪神の初勝利が遠いままだ。巨人3連戦の最後はガンケルが初回に4失点。打線も巨人ドラフト3位赤星を打ちあぐねた。日刊スポーツ評論家の鳥谷敬氏(40)は苦境に立たされている若虎軍団を「慎重になりすぎている」と分析。「今こそ大胆さを思い出してほしい」と提言した。【聞き手=佐井陽介】

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大型連敗中に「硬くなるな」というのは酷な話です。とはいえ、この日の阪神ナインは慎重になり過ぎているように映りました。

先発のガンケル投手は初回、丁寧にいき過ぎて2四球。1点を惜しんだ結果、中田選手に満塁本塁打を浴びました。7回のアルカンタラ投手もコース、低めを狙い過ぎて2四球を与えてから4失点。連敗中に1点もやれないと思う気持ちは痛いほど分かります。ただ、もう少し「単打ならOK」ぐらいの逃げ道を用意しておけば、ここまで窮屈な投球にならずに済んだのではないでしょうか。

野手にしても同じです。止めたバットに当たった打球が2回までに2度もありました。3点を追う7回2死満塁では遊撃・中野選手が三遊間へのゴロをさばいた後、無難に二塁送球を選んでセーフにされています。あの場面、二塁が間に合わないと分かった瞬間、一塁送球を選ぶ冒険もアリだったと思います。長期連敗中という重圧が、選手をより慎重にさせてしまっているのでしょう。

巨人はこの日、守護神の大勢投手をベンチメンバーから外していました。阪神は初回に4失点した後も、「2点ビハインドで9回に入ればチャンスはある」ぐらいの余裕を持って戦っても良かったように感じます。中盤にはガンケル投手がけん制のサインを見落とすなど、連敗しているから出てしまうミスも気になりました。

今のタイガースは若いチーム。失敗を恐れずどんどんチャレンジしよう、というカラーのはずです。今季の開幕戦は初回に1番近本選手、2番中野選手がともに二盗に失敗。それでも積極的なスタイルを崩さず、4回までに8得点したチームです。9連敗した今こそ、開幕戦を迎えた時の姿勢を思い出すタイミングなのではないでしょうか。

僅差の終盤にプレーが慎重になるのは当然です。ただ、1回から9回まで慎重になり続けると、仕掛けも後手に回ってしまうものです。野手であれば、走者がどんどんスタートを切る。打者全員が打つ方向を決めて徹底してみる。ランエンドヒットを選択してみる。投手もどんどんストライクゾーンで押してみる。重苦しいムードが漂う今だからこそ、これまで以上に大胆になってほしいものです。(日刊スポーツ評論家)

巨人対阪神 7回裏巨人2死満塁、糸井嘉男が吉川尚輝の飛球を追うも捕球できず3点適時二塁打とされる(撮影・たえ見朱実)
巨人対阪神 7回裏巨人2死満塁、糸井嘉男が吉川尚輝の飛球を追うも捕球できず3点適時二塁打とされる(撮影・たえ見朱実)
巨人対阪神 9回表、さえない表情で戦況を見守る阪神ナイン(撮影・垰建太)
巨人対阪神 9回表、さえない表情で戦況を見守る阪神ナイン(撮影・垰建太)