審判の取った行動が大きな騒動になっている。ロッテ佐々木朗希投手(20)に対し、注意喚起のために試合中に詰め寄った白井一行審判員(44)の一件だ。

判定に対して取った態度を佐々木朗も、冷静さを欠いた白井審判員もともに反省はしているだろう。退場という一線を越えたわけではないし、ことの是非を私も含めた外野がこれ以上、騒ぎ立てる必要はないと思う。

1点、言うならばNPBの取った対応には疑問が残る。検証結果の末に「別の方法で対応するべきだった」と白井審判員に指摘したという。ただ似たようなケースは今までもあったし、私も現役時代に感情的に言われたことがある。その時に今回のような対応があったかと言えば、表立っては何もなかった。

完全試合を達成した佐々木朗と、18歳の松川という若きバッテリーが関わったことで社会的な騒ぎになったから、動かざるを得なかったと思えてしまう。今回の事象で対応するならば、今後も同様のことが起きた時も動くと方針を統一する必要がある。

捕手の立場で言うならば、審判とはコミュニケーションの積み重ねが大事だ。若いころはボール球をストライクに取ってもらった時は「ラッキーだな」と思っていた。だが、たまたま、その1球はストライクを取ってもらっても、試合の中でその後はボールと判定されれば、配球の組み立てがしにくい。それならば「今のは少し外れていましたよ」と冷静に言って、本来のゾーンに修正した方が1試合というスパンの中ではやりやすくなったりもする。 審判も生身の人間で機械ではない。間違えることもある。判定を下した後も「今のは微妙だったかな」と内心は思っていることもあるだろう。そういう時に「僕はこう思いましたよ」と感覚を擦り合わせることは、抗議でも何でもなく、双方にとって大事なことだ。

投手が判定に不服な態度を取っても「いや、今のはボールです。合っていますよ」とフラットに伝えることもあった。そうした信頼関係の上に成り立って、我々は一緒にシーズンを戦っている。

私が審判とのコミュニケーションを図れるようになったのは、30歳を過ぎてからだった。審判も選手の実績を見て、接してくる。実績の浅い若手が審判とやりとりを重ねるのは簡単なことではない。だからと言ってやらない理由にはならない。18歳でできるなら素晴らしいし、私ももっと早くできるようになっていたらと思う。

松川が間に割って入った時は「たいしたものだな」と思って見ていた。一方でどれだけ審判と言葉を交わしているかは、まだ分からない。野球の技術以外で、今後学んでいくことだろう。(日刊スポーツ評論家)