開幕から苦しんだ阪神と、着実に貯金をしてきた巨人という図式だが、今この時のチームの強さは異なる。4月29日の一戦では、阪神の投打がかみ合い、調子を上げている状態に見える。対して巨人は打線を組み替え、工夫はしているが、阪神の勢いを止められない試合に映った。

この日も、中盤までは互角の流れ。先にミスをした方が苦しくなる鉄則からすると、巨人サイドにいくつかのミスがあった。何よりも感じたのは、先発シューメーカーを救援した2番手今村の続投だった。7回、3四球で2死満塁から近本に押し出しの四球で勝ち越し点を与えた。

この押し出しで交代かなと感じたが、続投だった。中野に2点適時打、さらに佐藤輝に5個目の四球を与えたところで降板。畠に交代したが、タイミングを逸した。悪い連鎖は止められなかった。

今季の今村は内容も良く、チームの勝利に貢献してきた。シーズンの中ではこの日のように制球を乱すこともある。ただ、なるべく傷を広げないことも、長い目で見た時にはベンチの大切な采配となる。近本に押し出しを与えた時点でまだ1点差。制球に苦しむ今村の続投は、後手後手に回る前兆とも言えた。

6回には無死一塁で大城がバントで送れず、形を作れなかったのも痛かった。つまり、ミスの差が勝敗を分ける。阪神にもエラーはあったが、試合に直結するミスはなかった。この違いが、今のチーム状態を如実に示している。

巨人の打線は吉川が安定している。まず坂本以下の2番から5番までが、打点を挙げて優位に進めること。まだ慌てる段階ではない。悪い流れを呼び込む判断を分析し、足元を固めた野球を早く取り戻すことだ。(日刊スポーツ評論家)