阪神がゲーム差なしの広島との3連戦初戦に敗れ、4位に転落した。先発西勇輝が5回5失点と崩れ、広島戦は今季開幕から9戦8敗1分けとなった。ただ、日刊スポーツ評論家の岩田稔氏(38)は天敵床田から意地の2ランを放った5番大山悠輔内野手の好内容に着目。残り2戦での快音連発を予想した。【聞き手=佐井陽介】

阪神大山選手は誰の目にも絶好調の状態です。広島バッテリー、特に会沢捕手は3連戦全体を見すえた上で、大山選手への配球を選んでいるように映りました。左腕床田投手を導き、1打席目から内角直球攻めを徹底。必要以上に内側を意識させることで、状態を崩しにかかったのではないでしょうか。

大山選手はもともとインコースが得意。難しいボールも無意識にさばけてしまう打者です。そんな打者が内角を意識すると、時にボール球にまで手を出してしまうものです。そうなれば、バッテリーの思うつぼ。内角のボール球でファウルを打たせて外角で勝負というパターンも、より効いてきます。

ただ、大山選手はダテに交流戦2冠に輝いていませんね。ボール気味の内角球にはがっつき過ぎず、打つべきボールを丁寧に選択。7回1死一塁の3打席目では初球の内角低め149キロを一振りで仕留め、左翼フェンスをオーバーさせたから恐れ入りました。

この日床田投手が大山選手に投じた9球目は、実に6球目の内角直球でした。会沢捕手はボールゾーンをイメージしていたような気がします。にもかかわらず、ほんの少し甘くなっただけでアーチをかけられたのだから、投手も捕手もガックリきたことでしょう。

こうなると、次の打席以降はどうしても内角を攻めづらくなるのがバッテリーのさがです。栗林投手と対決した9回の4打席目は、5球のうち内角球は1球だけでした。最後は2ボール2ストライクから外角直球を中前適時打。カープ目線に立てば、もう抑えるボールが見当たらなかったのかもしれません。

大山選手は技ありの1発でミリ単位の勝負を制したことで、3連戦を見すえた広島バッテリーのプランを早々に崩した形です。残り2戦も優位に勝負を進めるのではないでしょうか。(日刊スポーツ評論家)

7回表1死一塁、大山は左越え2点本塁打を放ちナインの祝福に笑顔を見せる(撮影・前岡正明)
7回表1死一塁、大山は左越え2点本塁打を放ちナインの祝福に笑顔を見せる(撮影・前岡正明)