阪神がDeNAに連勝して借金を1に減らし、前半戦での借金完済に王手をかけた。先発の伊藤将司投手(26)が7回1失点で甲子園9連勝を飾り、3番近本光司外野手(27)、「7番一塁」で虎初スタメン出場した新外国人アデルリン・ロドリゲス内野手(30=パドレス3A)にも適時打が飛び出した一戦。日刊スポーツ評論家の岩田稔氏(38)はDeNA今永攻略のポイントとして、1番中野拓夢内野手(26)の「1回初球直球打ち」をあげた。【聞き手=佐井陽介】

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あの初球ストレート打ちは、投手からすればかなりこたえたでしょうね。難敵のDeNA今永投手に5イニングで101球を投げさせた阪神打線。すべては1番中野選手の一振りから始まったように感じました。1回裏、先頭で初球の低め148キロを完璧にミート。痛烈なライナーを中堅右に弾ませた二塁打の話です。

自分も経験があるから分かります。1回の1番打者に初球真っすぐを痛打されると、投手は相当にダメージを食らうものです。「あれっ、今日はちょっと状態が悪いのかな」といった具合に、自分のボールに不安が芽生えてしまうのです。そういった観点で見れば、外角要求がやや甘く入ったとはいえ、148キロを1球で仕留めた中野選手の働きには相当な価値があったと思います。

ただでさえ、今永投手は前回タイガース打線と対決した6月17日の甲子園で、初回に4失点しています。是が非でも今回こそは初回失点を避けたい一戦。1球目の直球を簡単にはじき返されたら、より慎重に行かざるを得なくなるのも仕方がありません。今永投手は1回、2者連続四球の途中、暴投で1失点。3回と5回も四球絡みでピンチを招きました。球数がかさんで5回2失点で降板。そんな窮屈な投球に導いた中野選手の働きは、難敵攻略の陰の立役者と表現しても大げさではない気がします。

中野選手は3回にも先頭で嫌らしい役割を成功させた後、2点目のホームを踏んでいます。2ストライクからボール球を2球選び、4球連続ファウルで耐えた後、9球目のチェンジアップを右前へ。中でも外角低めいっぱいのカットボールを2球連続でカットした場面には驚かされました。今永投手も段々投げるボールがなくなったのではないでしょうか。

持ち味の積極性を大事にしながら、追い込まれたら粘っこく食らいつく。やや淡泊な打席も目立った1年目と比べて、「投手が嫌な打者」として格段の成長が見られます。(日刊スポーツ評論家)

阪神対DeNA 3回裏阪神無死、右前打を放った中野(撮影・前田充)
阪神対DeNA 3回裏阪神無死、右前打を放った中野(撮影・前田充)