広島のキャンプでは毎年思う。選手はキビキビと動き、よく声が出ているなと。こういう雰囲気の中でなら、しっかり開幕へ準備は整うと、そういう気持ちにさせてくれる。

だから、ということではないが私の中では今年の広島はセ・リーグの台風の目になると想像している。投手陣は昨年、大瀬良(8勝9敗)、森下(10勝8敗)、九里(6勝9敗)のトータルで貯金ができなかった。柱になる先発スタッフの成績が、チーム成績に直結する典型的なシーズンだった。

チーム成績を見ると、交流戦での8つの負け越しに足を引っ張られ、結局シーズンも借金8のBクラスで終えた。毎年指摘しているが、広島は交流戦が鬼門になっている。パ・リーグをよく研究し、対策を練って臨むのは当然のことで、それをもっと徹底して交流戦に臨んでもらいたい。これだけの負け越しを改善することで、上位進出の可能性は広がる。

セ・リーグだけの成績ではちょうど5割。優勝争いに食い込む下地はある、とみている。今季は坂倉が捕手に専念し、これに伴いマクブルームが一塁、三塁に新外国人デビッドソンが入ることが濃厚。外国人選手は開幕してみないと分からないが、あなどれない打線であることに変わりはない。

何より、台風の目として推すのは、ドラフトで補強した社会人出身の投手3選手への期待がある。3位益田、5位河野、6位の左腕長谷部。この日、3人ともにキャンプ初のブルペンで投げていた。まだ、投球内容がいいとは言えないが、体の厚みもある、フォームも悪くない。しっかり調整を進めていけば、この3人がもたらすものは大きくなるはずだ。

優勝争いに食い込むため、広島には層の厚みが必須。この3投手が1軍で使えるめどがたてば、その波及効果も出てくる。新井新監督は我々の学年では初の監督。いい意味で、広島は毎年と変わらない雰囲気でキャンプインした。秘めた力を感じさせてもらった。(日刊スポーツ評論家)

広島日南キャンプ ブルペンで投げるドラフト6位の長谷部(撮影・加藤孝規)
広島日南キャンプ ブルペンで投げるドラフト6位の長谷部(撮影・加藤孝規)