DeNAバウアーは8回に“冷静さ”が欲しかった。無死一塁で阪神森下に同点2ランを許した。カウント1-1から内角を狙ったストレートが真ん中に入った。一塁走者は俊足の熊谷。走られたくないからストレートを投げたのだろうが、森下に狙われたように打たれた。その前の2球も内角だったが、内角攻めは必要なかった。甲子園で右打者がライトへ1発を放つ可能性は、かなり低い。外角中心で良かった。

バウアーからすれば、森下のそれまでの3打席凡退から、内角ストレートで詰まらせ、あわよくば三ゴロや遊ゴロで併殺という狙いがあったのではないか。まさかの本塁打だっただろう。せっかくの7回までの好投が打ち消されてしまった。あまりにもったいない1発だった。ストライクゾーンで勝負したがる投手ではあるし、ゾーンで抑え込むだけの球威を持っている。だが、球数が増え、多少、力が落ちてくると、このようなことにもなる。

冷静さが欲しかったのは4回の2失点もだ。大山、ノイジーの適時打は、いずれも2ストライクからの3球目。3球勝負も悪くはないが、もう少しコーナーを狙ってもいい。結果論の面もあるが、もったいなさが残る。特に、ノイジーによる2点目は自らの失策の直後だった。冷静さを欠いていたと言われても仕方がない。

ただその一方で、バウアーはこれまでのDeNAには足りなかったものも見せてくれた。“闘争心”だ。ノイジーに打たれた後、坂本、木浪と150キロ台後半のストレートで連続空振り三振。すごみが伝わってきた。自身の失策もあっただけに、さらにスイッチが入ったのだろう。戦う気持ちが野手にも伝わり、5回の一時勝ち越しにつながったと言える。

結局、“冷静さ”と“闘争心”のバランスが大事ということだ。冷静になりすぎても良さが消えるし、カッカしすぎてもいけない。私は若い頃、大洋時代に須藤監督から「心は熱く、頭は冷静に」と口酸っぱく言われた。プロとしての心構えだった。「心は熱く、頭も熱い」のがバウアー。熱さ、闘争心が他の選手に伝わることで、チームも1つになれる。優勝には欠かせない要素だ。ただ、勝負どころでは冷静さも欠かせない。首位との直接対決で逆転負けを喫し、連敗は痛い。その痛さを次につなげるためにも、冷静さを得るきっかけにしてもらいたい。(日刊スポーツ評論家)

阪神対DeNA 8回裏阪神1死、バウアー(手前)は前川に右二塁打を浴び降板となる(撮影・上山淳一)
阪神対DeNA 8回裏阪神1死、バウアー(手前)は前川に右二塁打を浴び降板となる(撮影・上山淳一)
阪神対DeNA 8回裏阪神無死一塁、バウアーは森下に左越え同点2点本塁打を浴びる(撮影・加藤哉)
阪神対DeNA 8回裏阪神無死一塁、バウアーは森下に左越え同点2点本塁打を浴びる(撮影・加藤哉)