今試合の見どころは、オリックスの先発・山本に尽きると思っていた。第1戦に先発して5回2/3、7失点。王手をかけられた状況でエースらしいピッチングが復活しなければ、オリックスに勝ち目はないと思っていた。

初回は3者凡退に抑えたものの、前回のピッチングと同様で体の開きが早く、真っすぐがシュート回転していた。それでも2死から森下に投げたカーブ(カウント2-1)がストライク。カーブでストライクが取れないと、前回のように打ち込まれる確率は高くなると思っていたが、最初に投げたカーブが低めに決まった。これが悪いなりのピッチングができる下地になった。

3回以降、変化球主体のピッチングに切り替えた。特にカーブが効果的に決まった。カーブという球種は緩急をつけるという以外に、投球フォームを修正できるメリットがある。

山本の立ち上がりの不調は「力み」からきたもの。今季から足を上げないで投げる投球フォームに変えている。足を上げてもそのまま真下に下ろして投げる投手がいるように、理屈的にこの投げ方でも「悪くなる」という要素にはならない。実際、今季のピッチングに悪い影響を及ぼしたという印象もなかった。

しかし日本シリーズのような大舞台になると違ってくる。足を上げないで投げる分、力が入れば上半身が突っ込みやすくなり、軸がブレてしまう。投球フォームの「間」もないため、修正もしにくい。しかしカーブは、上半身が突っ込んでいたら投げられない球種。だからカーブを投げていくことで上半身の突っ込みが抑えられ、フォームの矯正が利くようになった。

特に6回は決め球にすべてカーブを使って3者凡退。上半身の突っ込みがなくなり、真っすぐも効果的に決まるようになった。日本シリーズ記録となる14奪三振も、カーブで修正できた結果だろう。

山本の投球以外で見逃せないのは、打線の粘り強さ。本来、エースが不調で先制点を与えると、打線は焦りだして凡打が多くなる。それでも先取点を奪われた2回裏には2点を取ってすぐに逆転。5回裏にも2点を奪って前回の登板で完璧に抑えられた阪神の村上にリベンジを果たした。このしぶとさが今季のオリックスの強さだと思う。

これで3勝3敗の五分に戻した。7戦目の先発は前回の登板で好投した宮城。阪神打線がどう攻略するのか? 今季最後の大一番が、今から楽しみでならない。(日刊スポーツ評論家)

オリックス対阪神 完投勝利を飾り、抱き合う山本(右)と中嶋監督(撮影・和賀正仁)
オリックス対阪神 完投勝利を飾り、抱き合う山本(右)と中嶋監督(撮影・和賀正仁)