何が起こるか分からないと言われる国際大会ならではの戦いになった。正直、実力だけを比べるなら日本が上。しかし野球というスポーツは強いと思われたチームがコロッと負けることがある競技。打撃戦になれば実力差が出やすいが、特に今試合のようなロースコアのゲームはもつれやすい。接戦になった要因を考えてみた。
まず、ロースコアでの得点は、四死球、失策、本塁打が絡むケースが多い。先発した今井は、2回2死から7番打者に四球を与え、3回にも先頭打者に四球を与えた。こうなると、守っている野手のリズムも悪くなる。2回は無失点に切り抜けたが、3回は送りバントのゴロを一塁手の牧がファンブル。ピンチを招いて1死後、高めに浮いたスライダーを4番・盧施煥に2点適時打を浴びた。
日本の打線も走者を出しながらあと1本が出なかった。なかなか動ける状況が整わなかったこともあるが、盗塁を狙えるチャンスに動けなかった。4回2死から9番の岡林が右前打で出塁。先発・郭彬のクイックタイムは1秒35から1秒39ほどで、足のある選手なら高い確率で走れる。状況的にも仕掛けていい場面だった。
なぜ走れなかったのか? 郭彬はそれほど足を上げないで投げるため、一見すると走りにくそうに見える。しかし軸足に体重を長く残して投球するので、それほどクイックのタイムが速くならない。タイムを測っているコーチも「走れるぞ」と伝えているはず。それでも走れなかったのは、岡林が走るタイミングをつかめなかったからだろう。
この場合、誰かが背中を押してやらないと走れない。どういう経緯だったか分からないが、よほど悪いスタートでなければ走れるだけに、走れなかった原因を追究し、今後に生かせるようにした方がいい。
両チーム得点経緯を見れば、四球、失策、本塁打以外で得点に結び付いたのは6回に日本チームが挙げた1点と、タイブレークによる得点だけ。実力が上だと思われる日本にとっては、嫌なゲーム展開だった。内野の守備陣を見ても、失策した一塁手・牧と二塁を守った門脇は本職ではない。今大会のメンバーは各チームの要望もあって、井端監督も制約がかかった中での人選だったのだろう。本職ではない選手を慣れないポジションで起用しなければならないハンディがあった。
試合はタイブレークの末、門脇のサヨナラ打で勝った。「優勝してよかった」で終わることなく、日本野球の強さを見せつけるような試合を見せてほしい。(日刊スポーツ評論家)