日刊スポーツ評論家の鳥谷敬氏(42)が6日からの阪神キャンプ臨時コーチ指導を前に宮崎を訪れ、打倒タイガースをもくろむ2球団のキャンプに“潜入”した。広島では守護神の完全復活に太鼓判を押し、巨人では社会人ルーキーの打力を高評価。球団史上初のリーグ2連覇を目指す阪神に立ちはだかるライバル球団の現状は-。【取材・構成=佐井陽介】

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宮崎取材日は午前中から雨。日南では広島新井監督が「選手の時は雨が降ったら練習が楽になるからうれしかったのに、今は毎日晴れを祈ってるよ」と苦笑いしていました。広島、巨人キャンプともに室内練習を見させてもらう形にはなりましたが、それでも仕上がりの良い選手はやはり目に飛び込んでくるものです。

広島のブルペンでは栗林投手が元気でした。第1クール序盤から捕手を座らせ、打席に打者を立たせた中でも質の良い真っすぐが際立っていました。昨季は開幕直後から絶不調に苦しみましたが、元々は球界屈指の実力を持つ守護神です。チーム全体ではオフに主軸中の主軸だった西川選手がオリックスにFA移籍して、戦力ダウンが心配される今季。栗林投手の完全復活が一番の“戦力補強”になるかもしれません。

カープは昨季の1年間でだいぶブルペン陣が整備されました。ここで栗林投手が不動の守護神に返り咲けば、「勝利の方程式」の安定感が一気に増し、先発投手起用のバリエーションをさらに広げられます。「5、6回まで試合を作れば大丈夫」となれば、床田投手、森下投手、九里投手、大瀬良投手に続く投手の台頭を促しやすくなるわけです。新しい選手が1人でも2人でも出てきてほしいチーム状況だから余計に、昨季同様に下馬評を覆していくには栗林投手の完全復活が大前提となりそうです。

一方の巨人は阿部新監督のもと、雰囲気がだいぶ変わりましたね。どちらが良い悪いではありませんが、チーム全体の空気を感じ取った限り、今までと比べてピリつきが少し和らいだ印象です。おそらく阿部監督が意図的に「自由にやってくれていい」と柔らかい空気を作り出しているのでしょう。2軍監督だと若手を鍛え抜くために、時に厳しさも必要になります。1軍監督の場合は「現有戦力をどう使いこなすか」が仕事のメインになります。役割の違いに合わせて、キャラクターも使い分けているのかもしれません。

戦力的にはメジャー通算178本塁打の大物オドーア選手を獲得し、課題のブルペン陣にも阪神からケラー投手、馬場投手を補強。日本一チームの阪神と戦える布陣をそろえた中で、個人的にはドラフト3位の左打者、佐々木俊輔選手の打力に目を奪われました。室内で打撃練習を見たところ、スイングの強さ、ヘッドの使い方、ボディーバランスともに優れている印象。何より相手が打撃投手でもカーブマシンでもストレートマシン、スローボールでも同じ形で強く振れている。これは実は簡単なことではなく、非凡な能力と言えます。

佐々木選手は日立製作所出身の24歳。身長174センチながら、体を深く沈ませた「がに股打法」からしっかり強振できる点は大いに魅力です。大物助っ人だけでなく佐々木選手のようなルーキーもレギュラー争いに食い込んでくれば、やはり巨人は侮れません。王者阪神を脅かす強力なライバル1番手になるのではないかと予想します。(日刊スポーツ評論家)

森翔平の球筋を打席に入ってチェックする広島新井監督(撮影・加藤孝規)
森翔平の球筋を打席に入ってチェックする広島新井監督(撮影・加藤孝規)
2日、ブルペンで投げる広島栗林(撮影・加藤孝規)
2日、ブルペンで投げる広島栗林(撮影・加藤孝規)