連覇に挑む阪神はどんな雰囲気で第2クールに入っているのか、と思って宜野座に着いたが、アップ後のベースランニングを見ていて思わず首をかしげてしまった。「これはアップなのかな? それとも、全体練習前の準備運動なのかな?」

誰も声を出さない。ほぼ無音のまま淡々とベースランニングが始まる。スタンドから見ている印象としては活気はない。かと言って集中力がないというわけでもない。つかみどころがないまま、走者三塁での打球判断の練習が終わった。

今年はこんな雰囲気なのか。そう感じながらブルペンに移動。ここでも西勇、青柳が淡々とピッチングをしている。と、思った矢先、隣接するドームから選手の鋭い声が外まで聞こえてきた。中では部外者立ち入り禁止でサインプレーをしていた。

先ほどの静けさと、外まで響いてくる選手の声に、大きなギャップを感じた。メリハリと言えばいいのか、意図的に練習中のテンションに強弱をつけているように感じた。そうであれば、この後のシートノックはどうなのかと、メイン球場に移動した。

案の定、緊張感に満ちたシートノックをしていた。ノッカーから放たれたボールを、グラウンドに出ている全選手が次々とノーミスに近いクオリティーで処理していく。プレーに関連している選手からは良く声も出ていた。連係も取れている。

こうなると、先ほどのややまったりした空気感とは一変して、見ているこちらが引き込まれていく。アップの時との振れ幅の違いは、より効果的に見る側の集中力を高めてくれる。「ず~っと見ていられるな」と思わずにいられないほど、精度の高く、連係の取れた守りを堪能させてもらった。

今年の阪神も優勝争いをリードする立場に変わりはない。投手陣は盤石で、打力もある。強いて言うなれば、失策数は昨年リーグワースト。それでも勝っているのだから、ことさらに守備面を弱点として捉える必要はないが、岡田監督はキャンプインに際して守備からしっかり鍛えたいという趣旨の発言をしていた。

今のチーム状況で、さらに守備力が向上していけば、阪神の死角はますます狭くなってくるだろう。昨年、併殺を完成させた数ではリーグ1位だった。守りでスキを見せない戦いができれば、阪神の連覇はさらに現実味を増すだろう。

レギュラー陣はほぼ固定されつつある。言うなれば、主力にアクシデントがあった時、バックアップ陣が同等レベルの働きで補完できれば、有事の際にも慌てずに済む。少なくともシートノックでチェックした範囲では、そうした課題もクリアできる道筋は感じられる。

静かなトーンから始まったキャンプの練習風景だったが、むしろチーム全体が意識を共有してしっかりまとまっているのだろうという後味が残った。選手個々に任せる部分と、チームとしてガッと集中する切り替えは見事だった。

これも岡田監督の方針なのか、少しずつそうした空気が醸成されて引き締まったキャンプにブラッシュアップされたのか。いずれにしても、他球団が見れば何とも不気味に感じるだろう。

阪神が見事連覇した時、このキャンプのメリハリの利いたチーム練習が、大人のチームへの出発点だったと回想することになりそうだ。(日刊スポーツ評論家)

阪神岡田監督(左から3人目)と話す日刊スポーツ評論家の里崎氏(右)。左は平田ヘッドコーチ、同2人目は水口打撃コーチ(撮影・上山淳一)
阪神岡田監督(左から3人目)と話す日刊スポーツ評論家の里崎氏(右)。左は平田ヘッドコーチ、同2人目は水口打撃コーチ(撮影・上山淳一)
宜野座を視察する日刊スポーツ評論家の里崎氏(撮影・上山淳一)
宜野座を視察する日刊スポーツ評論家の里崎氏(撮影・上山淳一)
阪神工藤2軍外野守備走塁コーチ(手前)とグータッチする日刊スポーツ評論家の里崎智也氏は(撮影・上山淳一)
阪神工藤2軍外野守備走塁コーチ(手前)とグータッチする日刊スポーツ評論家の里崎智也氏は(撮影・上山淳一)
宜野座のブルペンを視察する日刊スポーツ評論家の里崎智也氏(撮影・上山淳一)
宜野座のブルペンを視察する日刊スポーツ評論家の里崎智也氏(撮影・上山淳一)