甲子園球場には、不思議な魅力が詰まっている。入社1年目、13年に夏の甲子園の取材で訪れた。以降はプロ野球担当になり、毎年のように通っている。浜風が流れ込む屋外球場は、気持ちがいい。いつもいつも、阪神ファンの「熱さ」には驚かされる。音楽の野外フェスティバルかと思うほどの、熱気とエネルギーがある。16日の阪神楽天1回戦、楽天ドラフト1位の藤平尚真投手(18)がプロ初登板&初先発した。期待の高卒ルーキーは、完全アウェーの中で5回を5安打2四死球2失点と奮闘した。打線の援護に恵まれず、初勝利はお預けとなったが、堂々のデビュー戦だった。

 父武美さん、母直美さん、祖父幸一さん、祖母八重子さんはスタンドの一角で息子、孫の勇姿を見つめていた。周囲には、熱狂的な阪神ファン。その中で、応援していた。両親、祖父母も完全にアウェーだった。だが、虎党は優しかった。ある人は「横浜高校の時代から見ていました。去年の甲子園もスタンドで見ていました」。「残念でしたね」と声を掛ける人もいた。何だか、ほのぼのとした気持ちになった。阪神ファンにとってみれば、敵なはず。だが、そんなことさえも超越する空気が、聖地には流れていると感じた。【楽天担当 栗田尚樹】