「楽天に新星が現れた」。「秘密兵器の登場」。CSファーストステージの西武戦後、ネット上ではそんな言葉が多く並んだ。台湾出身の25歳・宋家豪(ソン・チャーホウ)は、それに値する活躍を見せた。1勝1敗で迎えた第3戦、1点リードの6回から登板するとメヒアを151キロ直球で見逃し三振。山川、浅村と1発のある打者も難なく片付け、チームの勝利に大きく貢献した。

 宋家豪は、今季途中に育成から支配下登録された。シーズンわずか5試合登板。西武ベンチ、野球ファンにとっても、彼の情報量は少なかったはずだ。試合後の梨田監督の囲み取材では「監督は何故、彼を隠していたのですか?」という仰天質問まで飛び出た。梨田監督は「先を見て、後半戦から試してきた。(残る救援投手の)後ろから考えても、あそこはソンしかいない」。そんな男が、負ければ終わりの短期決戦で、大事なマウンドを任された。

 宋家豪と球団との出会いは、2年前にさかのぼる。当時、アジアのみならず、米国でもマイナー契約の話はあった。楽天は、育成での契約。条件面では、一番低かった。それでも「日本でプロになりたい」という本人の強い意志があった。台湾でドラフト指名されたが、入団を拒否した。

 その年、楽天の試合を仙台で生観戦したことがあった。エース則本が8回まで無失点に抑え、最後は守護神・松井裕が締めた。球団関係者はそこで「これが日本のプロ野球」とあえて、厳しい言葉で伝えた。すると「こういう世界をずっと求めていた。レベルの高い日本で頑張りたい」と返答したという。

 プロ野球である以上、球団も「外国人=助っ人」の認識。同関係者は「もちろん彼の持っている能力も期待していた。それ以上に、そういうメンタルの強さ、本気度を評価した」と獲得を決めた。

 背番号「143」からスタートした日本でのプロ生活。支配下登録され、背番号も「94」に変わった。まだまだ、これからだ。宋家豪の「ジャパニーズ・ドリーム」は、始まったばかりである。【楽天担当 栗田尚樹】