本人も苦笑いするしかなかった。西武の新外国人ニール・ワグナー投手(34)だ。
本拠地開幕となった4月3日のこと。昼前に最寄りの西武球場前駅で降りると、ワグナーと一緒になった。西武の外国人選手は電車通勤が多い。改札から一緒に歩いたが、球場に入ると、すれ違った球団職員さんに呼び止められた。私ではない。ワグナーが、だ。「IDカード、見せて」。来日1年目。開幕直後でまだ顔を知られていなかったのだろう。選手とは思われなかったようだ。すぐに誤解は解けたが「ブルージェイズにいた時にも同じことがあったよ」と笑っていた。
高校球児のような丸刈りで、Tシャツにリュックを背負った姿は、インターンの学生のようにも見えた。職員さんが間違えたのも仕方ないかな、と思った。見た目そのまま、もの静かで真面目な性格。ノースダコタ州立大では生物学を学び、生態学の授業で知った盆栽が趣味。さらに「プロ野球選手にならなかったら、医者になりたかった」というから、根っからの理系? かと思いきや、興味の幅は広い。電車の中だけでなく、遠征先の宿舎と球場を行き来するチームバスの中でも、分厚い本を読みふける。「アメリカでも、みんなスマホだよ。僕は、それより本を読む方がいい。クリアな気持ちになるんだ」。その時に読んでいたのは、アメリカの歴史上の人物の評伝集。「南北戦争の時の将軍の話とかね」と教えてくれた。
そんなワグナーが、好調なチームの今後のカギを握ると見ている。開幕当初は不安定だったが、「試合で投げていくうちに調子を取り戻して欲しい」(土肥投手コーチ)という首脳陣の辛抱が実りつつある。徐々に復調。10日時点で12試合に投げ、2勝1敗1ホールド、防御率2・38を記録している。
150キロ台の真っすぐに、フォークが武器。左右関係なく投げられるタイプだ。牧田、シュリッターが抜け、今季はリリーフ陣が不安視されていた。勝利の方程式は日替わりできた。ワグナーが「8回の男」に定着すれば、10年ぶりの優勝へ、また1歩、近づくはずだ。【古川真弥】





