世界の頂点を極めた男だからこそ、「説得力」がある。オリックス吉田正尚外野手(25)が21日に都内の東京医歯大で自主トレを公開。陸上ハンマー投げアテネ・オリンピック(五輪)金メダリストで、現在は同大学教授でスポーツサイエンスセンター長を務める室伏広治氏(44)から指導を受けた。

吉田正は人気テレビ番組「筋肉番付」で他競技の一流選手を圧倒し、無双状態にあった室伏氏の姿に感動。16年オフにダメモトで直筆の“ラブレター”を送付。17年1月から始まった指導は3年連続となった。

室伏氏は五輪金メダルの実績に加え、日本選手権20連覇という偉業を達成した。その後16年6月に引退を表明。現役時代からトレーニングの研究を行い、大学の教授として数々のアスリートの指導を行ってきた。競技者としての圧倒的な実績を誇りながら、指導者としての実績も実に豪華だ。

陸上男子100メートルで9秒98の日本記録を持つ桐生祥秀(23=日本生命)も指導を受けた1人だ。室伏氏から体幹トレーニングを学び、肉体強化に成功。日本人で初めて「10秒台の壁」を突破した。他にも16年リオ五輪カヌー・スラローム男子カナディアンシングルで銅メダルを獲得した羽根田卓也(31=ミキハウス)もレベルアップを求め、師事している。

吉田正は鉄人による指導について、以前にこんなことを話していた。

「室伏さん自身がトレーニングを実際にやりながらできてしまうからそれがすごい。(競技者と指導者の)両方の意見が持てるところが素晴らしいところ。だから分かりやすいですし、すごく説得力がある。だからこうなるんだとか、なんでこの力を発揮できないとか、その時間の中で感じられるので、深いなと思います」

実際にトレーニングを行っている様子を見ても、室伏氏が実践して、それを吉田正がまねている。目の前で動きを確認できるからこそ理解も早く、より効果的なトレーニングを行うことができる。

指導を行う室伏氏も吉田正の持つアスリートとしての能力を絶賛する。

「性格が素直で、自分で実践してできるまで諦めない精神がある。腰を悪くして手術したり、なかなか出場できなかったところから全試合に出られるようになった。まだまだ良くなりたいという気持ちがあったから成し遂げられたこと。そういうメンタル的なところがあった。体のバランスもいいし、言ったこともすぐできますし、素直な体をしている」

鉄人も認める素材。3年目の昨季はチームの4番も任され、打率3割2分1厘、26本塁打、86打点とエース級の活躍をみせた。今季はどんな記録を残し、チームを勝利に導くのか。「説得力」のさらなる証明へ-。“室伏チルドレン”の暴れっぷりに注目だ。【オリックス担当 古財稜明】