ちょうど1カ月ほど前、2人はグラウンドに立つことさえ許されない状況だった。

楽天ドラフト7位の小郷裕哉外野手(22)と同6位の渡辺佳明内野手(22)が19日にそろって初昇格した。選手の状態や故障者の状況を踏まえて決まった4人の入れ替え。ベテラン藤田の離脱はチームにとって大きな痛手だが、このルーキー2人が元気な姿で同時に1軍へ上がってこられたことには、少しホッとした気分にもなる。

ともにキャンプからオープン戦まで1軍で完走。開幕前に2軍行きとなってからは順調に実戦出場を重ねていた。ところが4月中旬、小郷と渡辺佳の2人は、外野での練習中に衝突して救急搬送された。小郷は「救急車に乗せられたみたいなんですけど、全く覚えてないんですよね。(衝突のショックで)前後の記憶が飛んでるので」と振り返る。

入院こそしなかったものの、脳振とうへのケアとして、まず絶対安静。「ちょうど1カ月くらい前ですよね。動くこともできなかった」。4月16日のイースタン・リーグ日本ハム戦で初本塁打を放った小郷だが、次に出場できたのが5月10日の同日本ハム戦。小郷よりは早く試合に戻ることができた渡辺佳も、ベンチ入りできない期間があった。再び2人で2軍のスタメンに名を連ねるようになると、渡辺佳が1番、小郷が4番に入る試合も増えた。アクシデントを乗り越え、昇格のチャンスが巡ってきた。

19日のロッテ戦では小郷が9回に代走でプロ初出場し、初得点も記録。渡辺佳もネクストバッターズサークルで代打に備える場面があった。小郷は「まだ打席に立っていないですし、盗塁も打球処理もしてない。小さいですけど、プロとして第1歩は踏み出せたのかなと思います」と笑顔だった。野球ができる喜びをかみしめながら、1軍に食らいつく。【楽天担当 亀山泰宏】