動じない心で帰ってきた。今オフ、プエルトリコでのウインターリーグに参戦していたオリックス高卒6年目右腕の鈴木優投手(23)は、頼もしくなった。

「野球が楽しいんです。初心に戻るというか、野球観が変わった。真剣なんですけど、やっぱり向こうの選手には『楽しい』が大前提にあるんです。抑える、打つしかない。勝負の前に結果は考えないんです」

目を輝かせて、続ける。「自分の中で、こだわりとルーティンは捨てました。あっちは試合が時間通りに始まらなかったり、練習なしで試合が始まることもあった。移動時間も…。3時間以上、移動してから先発も。それでも意外と投げられたりする。考えすぎるタイプでしたけど、必要ないルーティンは捨てました」。睡眠時間や試合前のブルペン投球以外は「何も考えなくなった」と邪念を捨てた。「だから、雨で中止になっても気にならない。次どこで投げるか。そこで全力を尽くすだけなんで」。

宮崎春季キャンプは2軍スタート。好投を続け、1軍でのアピールチャンスを得た。3月5日のロッテ戦(姫路)に向けて「投げるのが楽しみです」と胸を躍らせたが、前日から降り続いた雨の影響で試合は中止…。

西村監督が「2軍から報告は来ている。1度は上で(投球を)見てみたい」と評価する右腕は、悔しさを胸にしまって2軍で再調整した。3月20日にシーズン開幕予定だったが、新型コロナウイルスの影響もあり、開幕日は延期。首脳陣から改めてもらったチャンスは22日練習試合・楽天戦(楽天生命パーク)での先発マウンドだった。しかし…。当日はまたも雨により、試合が中止。「雨に愛されてますね!」と苦笑いするしかなかった。

2度目の雨天中止が決まったこのとき、2日後の24日練習試合・ソフトバンク戦(京セラドーム大阪)での救援登板を伝えられており「さすがにドームなので、雨は大丈夫。頂いた機会で結果を残すだけです」と意気込んでいた。だが…。23日に行われた12球団代表者会議で新型コロナウイルスの感染拡大に伴う開幕の再延期が決定。練習試合も一時中断となり、鈴木のアピール機会は「3度」も失われた…。

今季の実戦登板で1軍マウンドはいまだにない。それでも必死にアピールを続けている。28日は2軍練習試合・ソフトバンク戦(京セラドーム大阪)に2番手で登板して4回無失点。開幕は4月24日を目指しているものの、依然として先行きは不透明のまま。そんな中、若き右腕は先発ローテーション入りへ前進している。

高卒6年目。1軍の通算登板は3試合。苦しんできた分、今、奮起する。

「野球と向き合えない自分もいた。今、やっと形になってきた。プエルトリコから、キャンプもずっと調子よく投げているので。キャンプでじっくり取り組んだ成果が出てきた。やっぱり、楽しいんです。野球って」

心の声が出た。好きだから頑張れる。【オリックス担当 真柴健】