新型コロナウイルスの影響で外出自粛となった3月末から毎日、埼玉県に住む祖母と電話している。「今日の夜ご飯は何食べたの?」「マスク売ってたよ」など、いつもとりとめのない話をしているが、この間は電話越しの祖母がいつもよりうれしそうだった。

「プロ野球、始まるねえ!」

祖母は大の巨人ファン。テレビで中継があれば必ず見ている。「早く野球始まらないかな、なんか暇でね」と、たびたび電話でもらしていた。待ちに待った6月19日の開幕。巨人の相手は阪神に決まった。「巨人に勝ってほしいよね! ……やっぱり、どっちが勝ってもいいね」。現在、阪神担当をしている私に気を使いながら、心底楽しみにしていた。球場に訪れて観戦することはなくても、プロ野球は多くの人の生活の一部となっている。

5月30日、阪神の紅白戦を取材するために3月以来の甲子園に訪れた。関係者入り口にはサーモグラフィーが設置され、体温チェックを行う。入れるのはバックネット裏の記者席のみで、約3席分ずつ間隔を空けて座った。通常より記者の人数も制限されているせいか、甲子園全体が静かなように感じる。全てがこれまでにない光景だった。シーズン開幕後も当分の間は無観客試合。寂しいけれど、プロ野球のある日常が戻る第1歩だ。

阪神の開幕投手に内定している西勇輝投手(29)は、5月下旬のオンライン取材で当面無観客試合が行われることに、こう話していた。「無観客でテレビ越しでしか見られないけど、自分がよくやってる笑顔だったり、矢野監督が言う楽しくやるプレーというのは、画面越しでも伝わると思います」。画面の向こうにはたくさんのファンがいる。いつか球場に大きな声援が戻る日を信じて、選手は変わらぬ全力プレーを見せてくれると思う。【阪神担当=磯綾乃】